そこまで推しという訳ではない【宮治】【完】 (ページ30)

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治くんの家に入ればお揃いのスリッパ、2つ並んだ色違いの歯ブラシ、ペアのマグカップにお箸や食器類、出掛ける度に増えていった写真たちにお揃いのネックレスが目に入った。

『あっ…』

思わず手にしたのは、写真立ての傍に置かれていた高校の卒業式に治くんからプレゼントしてもらった治くんが付ける方のペアリング。

〝まだ高校生やから安いやつやねんけど、いつか絶対にええもん買うたるから〟
と言われ赤面したのを思い出す。

こんなにお揃いの物がたくさんあるのに、私はこの家に住んでいるわけではない。

大学までは私も兵庫にいたけれど、就職は東京で働く事になって必然的に遠距離になってしまった。

離れて暮らすようになってからお互い仕事で忙しく会える時間も限られてきて、今日こうやって会えて家に来たのも久しぶりだった。

『私はいつでもいいんだけどなぁ…』

ペアリングを静かに元の場所に置き、治くんが寝ているベットまで行けば久しぶりに見る寝顔。
可愛いなんて思いながら目を閉じれば、あっという間に夢の中に落ちていった。

キッチンで朝食を作っていれば、まだ半分夢の中の治くんが後ろから抱きしめてくる。

『おはよ、治くん』

治「ん～…、はよ」

『昨日飲み過ぎてたけど、体調はどう？
薬飲む？』

治「だいじょーぶ」

まだぎゅーしててええ？と寝起きの治くんは少しだけ甘えん坊。

治「今日店終わってからやけど、夜飯行かん？」

『行く！私がお店決めとく？』

治「んーん、前から気になっとった店に行こう思っててん。」

ちょっとだけお洒落してきてな！と付け加えられ、仕事に向かう治くんを見送る。

夜までの空いてる時間をどうやって過ごそうかと考えながら掃除をそこそこに、久しぶりの兵庫の街に出ればもうすぐクリスマスな事もあり、夕方になればイルミネーションが凄くキレイで思わず携帯を取り出し写真を撮った。

『ちょっと早くついちゃったから、こっちで待ってるね』

治「すまんな、今もう終わるからちょっと待っとってな」

5分もしないうちに、閉店作業を終わらせた治くんが「ほな、行くか」と私の手を取り着いた先は、いかにもお洒落で高そうなレストランに思わず緊張してしまう。

治「そない緊張せんでも、一緒に飯食うとるのは俺やで？」

そこに緊張してるわけじゃないよと言えば少し緊張が和らいだ気がした。