そこまで推しという訳ではない【宮治】【完】 (ページ13)

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試合に見入っていたというよりも、きっと治くんを見ていたんだと思う。
だって、初めて中庭で話した時の笑った顔とか、隣を歩きながら侑くんの愚痴を不満顔で話したり、バレーの事もご飯の話しをする治くんもいつも楽しそうに笑う。

話しを聞いてるだけでこっちまでワクワクするような笑顔で。

でも今コート内でバレーをしている彼は得点が決まれば仲間とハイタッチをしたり点を取られれば分かりやすいくらいに悔しい顔、1つのボールを追いかける真剣な目つきと汗を拭う仕草。
同じ治くんなのに別人のような雰囲気で凄くかっこいい。

いや、、〝かっこいい〟の一言で表してしまうのはなんだか少し違うような。

気が付けば40分程度の昼休憩に入り観戦に来ている生徒もぞろぞろと体育館を出ていくのに合わせて、友達と予定が合わず1人で来ていた私はあまり人の居なさそうな所を探してベンチに腰を下ろした。

コンビニで買ったサンドウィッチとお茶。
さっきまでの試合もバレーをしてる治くんも目に焼き付いていて心臓がドキドキしているのをお茶を飲みながら落ち着かせる。

治「Aさん！
今日来てくれてありがとお！ほんま嬉しい！」

隣座ってもええ？と言いながら彼もお弁当を広げる。
さっきまで真剣な表情でコート上にいた治くんが、飯や飯～と口いっぱいにご飯をかき込む治くんが手の届く距離に座っている。
お茶を飲んで少しは落ち着いたのに、また心臓がうるさい。

『治くん、今日は本当に誘ってくれてありがとう。
バレー見るの初めてでルールとか詳しくないし不安だったけど、なんかこう、、凄かった！」』

治「ならよかったわ。無理矢理誘ってもうたかなって思っとったけど。でも俺的には上手くいかんかったんよなあ～」

ミスばっかやったで、と悔しさを隠すようにへらりと笑う。

『全然そんな感じしなかったよ、凄いかっこよかった！』

治「かっこよかったか～？そら照れるわ。
でも、好きな人が見に来てくれとるし次こそはもっとかっこええ所見せなあかんな！」

チクリ…。

治くんの口から発せられた〝好きな人〟という存在。
治くんにだって好きな人くらいいて当然だし、侑くんと喧嘩してる時の騒がしさもご飯を食べる時の嬉しそうな顔も、バレーの話しをする顔もきっと私だけが知ってる顔じゃない。
なんで今治くんの好きな人という発言に胸が痛んだのか、なんでさっきの試合を見て目が離せなかったのか。

私、治くんのこと…好きなんだ。