第9訓 ページ10
それから松下村塾で過ごす日々はあっという間に過ぎていった。
塾生のみんなは弟のように可愛がってくれたし、松陽先生は私が気になったことを全部教えてくれた。
特に仲良くしたのは銀にぃ晋にぃこたにぃの3人。
銀にぃからは嫌なことのサボり方、晋にぃからは嫌な奴のぶん殴り方、こたにぃからは自分や周りがやらかしたことの証拠隠滅の方法を教わった。
誰も私が女であると、天皇家の人間であると知らない空間は心地よかった。
この期間で私も変わったことがいくつかあった。
周りの人に遠慮がなくなったし、剣道を教わるようになったりした。
剣道は、まだ先生どころか兄さん達からも一本も取れないけれど、自分も滅多に一本取られなくなった。先生からは相手の攻撃の受け流し方、避け方は一級品です、と太鼓判を押してもらった。
あと、周りにわざと負けるのをやめるようになった。
やはり私は女だし年下だし、みんなに買ってしまうのは問題があるのではないかと私はテストでも剣道でも途中でうまく手を抜いていた。
いや、私の中では男には勝たないというのが当然となっていたというべきか。
ただ、銀にぃと戦ったとき攻撃を受け流し続けて、途中の程良いところで当たろうとしたらめちゃくちゃ怒られた。
「いいか、スイ。てめぇが何を遠慮しているのかは知らねぇ。だがな、男と男の戦いで手を抜かれること以上に俺たちに対して失礼なことはねぇんだよ。」
その言葉で私は目が冷めたようだった。男と男の戦い。今私は男装しているのだから、女として男をたててやる必要などかけらもなかったのだ。
それからはいい子ちゃんの仮面を取り去って何事も(勉強や剣道はもちろん、悪戯も。)本気でやるようになった。
松陽先生の拳骨をくらう回数は増えたけれど毎日が楽しい。
そうして、私は9歳となった。
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廣岡唯 - 続きをくれよアル(神楽) (1月14日 16時) (レス) @page13 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ran(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (12月14日 18時) (レス) id: cc8a597751 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作成日時:2022年9月12日 16時