第11訓 ページ12
喧嘩していたはずの二人までびっくりした目でこちらを見つめている。
「スイ……おまえそれ、全然大したことあるじゃねぇか。」
「相手方に断ってもらうとか出来ねぇのか?」
晋にぃが問いかける。
「うーん、どちらかといえば結婚したいのはあっちだから多分無理。まぁ、兄さんには僕をこんなところで放置して育たせてしまったって言う後ろめたさがあるからねぇ……。そこを突けばこっちはなんとかなるんじゃないかと思っている。あとは、相手の出方次第かな。京に呼び戻されるかもって方は私が妾の子供だっていうのをさり気なく強調したら、周りの人たちが連れ戻すのに反対してくれないかなぁって期待してるとこだね。」
「それ、マジで俺らにできること何もねぇな……」
「だから大したことじゃないって言ったじゃないか。でも、聞いてくれてありがとう。」
本当は大したことある。婚約に反抗することはできても、このまま萩で自由にしている権利をもぎ取るのは至難の業だ。
この四年間、私を取り巻く環境は大きく変わった。
四年前、こちらに来たときには私は後ろ盾のない混ざり物の子供で私の利用価値はないに等しかった。
それが今は違う。一年前、ついに私と兄の一人を除いたすべての兄弟姉妹が死んだ。
これにより、私は天皇唯一直系の娘となったのだ。このあたりから京へ帰ってこないかという誘いは来ていた。しかし、私はこちらでの暮らしが楽しかったために、辛い記憶を思い出す都には戻りたくないと何重にもオブラートに包み断ってきた。
それが数ヶ月前、天皇崩御によって兄が天皇に即位。私は天皇のただ一人の兄弟として利用価値が上がってしまった。
今回の婚約もそれによるものだろう。
だが、今までろくに天皇家としての特権は享受していないのに天皇家のために、義務だけ果たせと言われても納得はできない。
私は徹底抗戦の姿勢を見せていた。
それから半月後、兄から婚約について相手方から使者が来るため、お前も一度、京の都へ帰ってくるようにとの命令がもたらされた。
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廣岡唯 - 続きをくれよアル(神楽) (1月14日 16時) (レス) @page13 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ran(プロフ) - 面白いです!更新待ってます! (12月14日 18時) (レス) id: cc8a597751 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作成日時:2022年9月12日 16時