さよならの前 ページ44
病院に着くと、医者が興奮した様子で俺達を待っていた。そりゃ興奮もするか。
連絡が来たのは風丸さんかららしいが、医者にも当然伝わったらしくお祭り騒ぎだ。
その騒音をくぐり抜けるように廊下を歩き、階段を上り、いつか来た病室に行く。
がつがつ、と重々しいその音は、まるで俺の心情を表してるみたいで、笑いそうになった。
だって、ああ、もう、ああ...何でもない。考えるのも嫌だ...
案の定ぎゃいぎゃいと声は近づいてきた。はしゃぐ看護師、メモを必死に取る医師、歓喜の患者。
舐めるような視線を病室に向けていたが、瞳子さんが近くに寄ると気前よく退いた。
玲名さんが後ろへついて病室に入ってく。俺もつれて病室に入ろうとした。が、足が動かない。
びくっ、と引き攣ってるかのように固まっている。気持ち悪いがそのまま気にせず歩いた。
病室に入った瞬間、アルコールに混じったあの人の香りがふわり、と鼻をくすぐった。
ベッドへ目を向けると、幸せそうに笑う貴方が、そこに佇んでいた。
でも当然、貴方の隣には風丸さんがいた。同じように、微笑んでいる。
「A、本当に良かった。心配かけさせて...馬鹿」玲名さんが涙声で呟く。
「よく頑張ったわね、これからは幸せになる番よ」瞳子さんが軽くAさんを抱きしめる。
俺は何も言えないまま、そこに立ち尽くすように見つめていた。
「...」
一度、風丸さんが俺を見た気がした。大きな茶色の瞳には、どこか哀愁が隠れている。
何で欲しいものを手に入れて、そんなに悲しそうな顔をしているんだ？
... ...理解、でき、ない...いや、出来るかもしれない。でも考えたくはなかった。
思考することを拒否し続ける俺を、愛しい人が名前を呼んだ。
「マサキ君」
「...はい」
「来てくれてありがとう、すごく嬉しいよ...」
そう言って、丸い緑の瞳を輝かせて笑った。あの時と変わらないのに、それに熱を感じない。
「マサキ君が応援してくれたから、きっと上手くいったんだよ」
そんなはずない。俺がいなくても貴方は生き続けていただろう。...惨めだ。
【支えられないなら、どうすれば貴方に忘れられない？】
「...マサキ君？」
不思議そうに顔をのぞかせたAさんは、顔をそっと近づけた。緑に黄色が入り混じる。
【貴方がどうか忘れませんように。】
それをいいことに、俺は重たくて仕方ない右腕を持ち上げて
目が覚めたばかりの、貴方の真っ白な左頬を、思いっきり殴った。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
