見送る人 ページ38
***手術室前
「ヒロトが一着か」
手術室前では、風丸君が待っていたかのようにそこにいた。勿論偶然だ。
彼の後ろではちょうどAが手術室に運ばれ、ドアの閉まる音がろうかに響いた。
「... ...今日の手術、よろしくね」
「ああ、最善を尽くすよ」
何か言いたかった気もしたけど、それより早く違う言葉が出てしまう。
多分言わない方が良かったんだ。そう思い、出なかった言葉をなかったことにする。
[成功するか]、なんて聞くのは野暮だろうから...
「数年前から、迷惑かけたな」
「随分と遅い謝礼だね」
「はは...お前らしい」
苦笑を浮かべる彼は、緊張感が滲んでいるようでもあり、どこか落ち着いているようでもあった。
多分、メスを持つ瞬間より、今までの方が怖かったんだろうな...
いくら鍛錬を積んだとしても、きっと俺にはできない。他人ならできるだろうけど。
そう思うと、昔からずっと変わらない彼の芯の強さは、若干恐ろしくもある。
「それじゃ...もう時間になるから」
「粉骨砕身、してきてね」
「当たり前だろ、願っててくれ」
そういうと、迷うことなく背を見せて廊下の奥へ消えていった。
はためく白衣の裾は、儚くも小さな音を立てて揺れている。蝋燭に灯った火のようだった。
ぼうっと廊下に立っていると、足音がこちらに近づいているのに気づく。
振り向くと、玲名と姉さんが到着していたらしく、こちらに歩いてきていた。
玲名はだいぶ緊張した面持ちだが、反面姉さんは落ち着いている。
「あとでリュウジも来るらしいわ」
目の前まできたところで、姉さんが無理矢理玲名の背を押していることが分かる。
園内でもうだうだしていたらしく、半ば強制的に連れてきたらしい。
「... ...失敗しないことは分かってる、が...」
これじゃまるで、玲名が手術するみたいだ。さっきの風丸君に会わせてやりたい。
まぁ、自分も大声でそう言えるほど緊張してないわけじゃないが...
「せめて見届けないとね、どっちの結果でも」
三人で手術室前まで歩き、近くの簡易的な椅子に座って視線を上げた。
... ...ちょうど、【手術中】の赤いランプがついた。
思わず固唾を飲んで目を瞑る。これから何時間も待つというのに、なんで今なんだろうか。
眠っているであろうAの顔、さっきの風丸君の姿、両者がフラッシュバックする。
そんな俺の背中を、姉さんは軽く撫でて慰めてくれた。
廊下は静寂に包まれていく。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
