放課後 ページ37
***放課後
「...狩屋、先輩をおちょくるのもいい加減にしろよ...」
綺麗な顔を歪めては、今にも手が出そうなくらい怒っている霧野先輩。
こうなっているのも、今日やった試合形式の紅白戦でパスやら指示を完全無視したせいだ。
勿論故意ではない。ちょっとだけ、ちょっとだけ考えことをしていたから。
「...すいませんでした」
「謝ってほしいじゃない、何で指示を聞かなかったか答えろ」
「それは...」
口が開いても、言葉が出ない。いつもより周りの足音や他の生徒の声が大きく聞こえた。
それを見ていた先輩はもどかしかったのか、頭を掻きながら俺より先に話し始める。
「...悩み、でもあるのか」
「な、ないですよ」
「馬鹿げてでも良いから言ってみろって」
もう理由があれば何でもいいんだろうか。聞き出したい、というよりは終わらせたそうな顔。
まぁ相当性悪でない限り、後輩をいじる時間など省きたいものだろう。
ああ、笑われないだろうか。いや、この堅物先輩は笑うどころが引くかもしれない。
「...振られた、んです」
「好きな人に？」
「ええ、まぁ」
ふーん、と先輩は生返事をして、俺から視線を上へと向けた。
俺も追うように空を仰ぐ。いつの日にか見たような、薄められた青色が滲んでいた。
... ...数秒ぐらい見つめ、視線を下ろすと同時に霧野先輩は笑った。
それも、馬鹿にするように。
「お前でも後悔するんだなぁ、面白い」
「どういう意味ですか」
「お前バカ正直だから、自分がしたいようにするんじゃないかって思ってた」
「しましたよ」
話の意図が全くわからない。馬鹿にするよう笑っているのに、波が立たなかった。
ただ先輩だけはわかってるように笑って、ゆっくりと息を戻し一歩前に出た。
「お前の気持ちは伝わってるんだよ、きっと」
前にいるせいで顔は見えなかったが、聞こえたのはだいぶ落ち着いた優しい声。
これ以上もなんだしな、と言ってその場から去っていった。ザクザクと砂の音が響く。
【後悔してるのは、気持ちを伝えてしまったから。】
そういうことかよ、と俺は思いっきり自分の額を右手で叩いた。
怒られていたからか、冷や汗が滲んだ右手から、ひんやりとした感じが浸透してくる。
きっと術後とか結婚式に行ったら泣くんだろうな、俺。
並ならぬ後悔をするんだろう。
「... ...夏、嫌いになりそう」
空のように薄まったその言葉は、ひとしきり吹いた弱い風に吹き飛ばされていった。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
