久しぶり ページ29
***翌朝
ベッドの苦い匂いで目が覚めた。非常に目覚めの悪い朝で、思わず腹が立つ。
時計を確認すると、8時20分前後。
薬のおかげで良く眠れたようだ。いくらか身体は重いが、いつもとたいそれて変わらない。
ぐっと背伸びをすると、枕元に置いてあった携帯がチカチカと光っていることに気づいた。
一郎太からだろうか。私はその携帯を手に取り、画面に指先を滑らせる。
待受画面には、今にも心地よい寝息が聞こえてきそうなほど、安眠している一郎太(15歳)。
正直なところ、これは盗撮に近い方法で撮ったから本人には内緒で使っている。
画面を更に動かしていくと、メールが一通来ていた。予想通り、彼のメール。
「... ... ...そっか」
次が最後か。
確かに、私もそんなに体力が残ってるわけじゃないし、これが最後の手術になるかもしれない。
もう治らないなら、身体の中を掻き回されるだけ損だしね。
[次会ったら、絶対離れないだろうから。]
何より、心躍っちゃうんだよな。こういう言葉聞くと。
溢れる喜びを抑えるように、携帯に両手を重ねて胸元に寄せた。
早く彼が来てくれますように。
.
.
.マサキside
完全に熱も引き、喪失感からか身体も多少軽くなって、三日ぶりに登校した。
何十時間しか経ってないというのに、天馬君や信助君はやけに騒がしい。
「狩屋がいないと静かだから、寂しかったよー」
不意に呟かれた声に、少々驚きつつ席についた。
そういえば、俺の方も何だか彼らの声が久しぶりに感じる。
「円堂監督が、後で来いって言ってたよ」
「マジで」
つい声がこぼれた。そりゃ顧問としては、部員を管理するのは仕事の一環だ。
何か言われないだろうなー、と疑心を抱きながらも、頷いておいた。
できれば熱であったことを上手く使って、Aさんのお見舞いに行きたかった。
こんなズル休みもどうかとは思うが、この煮え切らない気持ちをどうにかしたい。
病院に行ってしまった以上、もう園で顔を見れる確率はないから。
... ...もう帰ってくることもないだろう。
不意に握りしめた手には、何が理由かは分からないが、冷汗がにじんでいた。
それと同時に、時計の針がHRの始まりの時刻を指した。のっそりと教卓へと先生が動く。
静かで整った教室に、先生の声が淡々と響く。
今日が何事もなく終わってくれればいいのに...と思いながら、円堂監督のことを思い出し
思わず静かな空間で一人、ため息を吐いてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
