背中 ページ30
***放課後
半ば嫌な予感がしつつも、職員室のドアへと手を伸ばした。
扇風機のおかげか、廊下よりも涼しい職員室の中。もちろん、円堂監督がいた。
あっち側も気づいたらしく、すぐに駆け寄ってきてくれた。
「久しぶりだな」
「たった三日ですよ」
男子三日会わざれば刮目してみよ、とも言うが残念なことに俺はたいそれて成長してない。
円堂監督は[わかってる分かってる]と言いながら、俺に廊下へ出るよう言った。
廊下は教室ほどの活気もなく、一人二人遠くに見えるくらい。
グラウンドではしゃぐ先輩達の声や、保健室で涼む同級生の声が聞こえる。
「Aが入院したんだってな」
廊下に出たか出ていないかの境目くらいで、口を開いてそういった。
「知ってるんですか」
「おう、ヒロトから。」
「...今回の話と関係が？」
そう言うと、先回りされたのが予想外だったのか、うーんと細く唸った。
円堂監督にAさんの入院を伝えたのは何故か、それも知りたいところだが。
「狩屋に部活をさせないで欲しい、ってさ。」
「え？」
「Aの所にお見舞いに行かせて欲しい、ってメールに書いてあった」
以心伝心。同じものが好きだと、思うことも同じなのだろうか。
今朝ヒロトさんは先に仕事に行っていたから、わからないはずで...
というより、いつの間にそんなことを。
「狩屋がAの事好きだから、最後くらいはー...って」
一言余計なんだよ、あの人は！
思わず言いかけたが、今回ばかりは自制心が働いた。
少しヒロトさんが嫌いになりそうだ。...いや、良い人だとは痛いほどわかるが。
「俺も応援するぞ、砕けてこい！」
監督はいつものように豪快に笑って、俺の背中をばんと叩いた。
本当にこの人がいうと、どうにかなってしまいそうだから怖いもんだ。
「せめて当たらせてくださいよ...」
そうだな、と笑みを崩すことなく胸を張られてしまった。
... ...まさか、背中を押されてしまうとは、思っても見ない。
でもここまで道筋を立ててもらったんだ、行かなきゃ何もないだろう。
話が終わって、じゃーなーと緩く手を振って見送る監督を見つめ、心が軽くなった。
何かあっても、大丈夫な気がする。...今だけは。
風丸さんには勝てないとか、いなくなるとか...今わかったことじゃない
なら今のうちに、自分の思いを伝えて...
別に、諦めるわけでも投げるわけでもない。
ただあの人を愛せた、一人の人間として会いに行こう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
