王子様 ページ26
「ごめんね、急に来て」
「もう行っちゃったかと思ってたので、嬉しいです」
率直な意見を述べるものの、熱にやられてうまく笑えない。安心させたいのに。
それでも胸中を見抜いたのか、遠慮気味にAさんは笑った。
...俺が安心させられてどうすんだよ、相手はもうすぐ手術日で不安でいっぱいだろうに！
「あの、大丈夫...ですか？」
「え、何が」
「手術、もうすぐじゃないですか」
「ああ」
そこでようやくAさんが笑った。いつもの笑顔とは違ったけど、十分に微笑んでいる。
「もう大丈夫。マサキ君のおかげで、踏ん切りがついたの」
ありがとう、と言いながら、Aさんは優しく俺の頭を撫でてくれた。
二日ぶりに見る手は、心なしか骨ばっていて青白くなっている気がする。
唸る扇風機の風が相乗して、Aさんと俺の髪がゆらゆらと揺れた。
揺れる髪は、水に
「ちょっとだけ、怖いけどね。」
そういった唇は、どこか弱々しかった。
ひとしきり頭を撫でると、するっと髪の曲線をなぞって手が降りていく。
俺はその右手を掴んだ。そこから逃げてしまいそうな細い手を。
やはりその手は色と類似して冷たくて、左手にじわじわと伝わってきた。
「わ、あったかい」
熱の違いに目元を緩ませるAさんを、ジッと見つめる。
それに気づいたのか、Aさんも俺の目をじーっと見て何かを待っていた。
冷たいものの、柔らかな肌の手は握ってるだけでドキドキする。
「Aさんの手術が、上手くいきますように。」
本当は。
本当はそんなこと祈ってない。
それを祈ることは、この場所から立ち去ってもいい、ということに等しいから。
愛せなくなっても、愛されなくなってもいい、ってことだから...
手の甲を一度手で撫ででから、そっと唇を押し当ててキスをした。
自分でも思っていなかったことができたという喜びと、これで最後という虚無感がじんわり滲む。
...終わらせてたまるか、とは考えてみるけど。
「王子様みたい」
Aさんのあどけない発言に、酷く恥ずかしくなってきた。思わず手を離す。
発熱時に似た熱さが、やっぱり顔や手足に出てきて言葉がしどろもどろになる。
「私からもお返し」
そういうと、Aさんは不意に俺の額に顔を近づけ、キスをした。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
