監督生の帰宅 〜5〜 ページ43
Aは談話室の隣の大きな部屋に安置された。
昔、ゲストルームとして使われた部屋だ。
Aが寮の全部屋を綺麗に掃除していたため、この部屋も綺麗なままだった。
ストレッチャーを運んだ運転手は、皆に一令して部屋を出た。
それと入れ替わるようにバルガスがやって来た。
そして全員並び、学園長の号令と共に黙祷をする。
〜このシーツの下に眠っているのは…、本当に…Aさんなのか…？〜
目を閉じ、頭を少し下げながら、ジェイドはそんな事を考えていた。
どうしても、Aが死んだ事が受け入れられない。
まるで他人事のように感じている。
Aの姿を見るまでは。
黙祷を直る。
「Aさんのお顔、見てあげましょうか？」
学園長が誰にも問うでもなく言った。
学園長の言葉に、クルーウェルがAに向かって歩き出した。
それを見たジェイドは一気に鼓動が早くなった。
〜嫌だ…見たくないっ…〜
ここから逃げ出したくなる思いに駆られる。
それに気付いたフロイドが、ジェイドの肩をしっかり掴んだ。
「ちゃんと、見てあげなよ…」
フロイドが小さな声で言った。
その言葉が逆にジェイドの逃げ出したくなる思いを加速させる。
ジェイドの足がすくむ。
〜Aさんっ…〜
きっと、ここで逃げたらAは悲しむだろう。
それは分かっている。
だからこそ、苦しい。
Aの顔を見ることが怖いと感じてしまう自分自身に対しても悔しい。
しかし、クルーウェルは足を止めることなくAの前までやって来た。
そしてシーツに手を伸ばし、掴む。
クルーウェルは頭の方からゆっくりとシーツをめくった。
ジェイドは思わず目をギュッと瞑り、顔をそむけた。
「あら。まるで眠っているみたいじゃない…」
ヴィルが第一声を発した。
「声を掛けたら目を覚ましそうじゃないか…」
リドルも優しく言う。
隣にいるフロイドは何も言わない。
ジェイドが目を開けてAを見るまで待っているようだ。
「フンッ。どっかの誰かさんは、大事な恋人の顔を見る勇気もないと来た。これじゃ、監督生も浮かばれねーよな」
「レオナ先輩っ！何てこと言うんだっ！」
ジェイドを挑発したレオナにリドルが声をあげた。
「アンタ、最低ね…」
ヴィルも呆れている。
しかし、ジェイドは怒る気も起きなかった。
むしろ、レオナの言い分は正しいとさえ思えた。
心をえぐり取られたような痛みの中、ジェイドに突きつけられた現実を受け入れていかなければならない。
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魅樹(プロフ) - 五月雨さん» 五月雨様 ありがとうございます。いつも読んで頂いてとても嬉しいです。コメントを糧に、これからも書き続けていきます。引き続き読んで頂けたら嬉しいです。 (2023年2月12日 22時) (
レス) id: e979216df4 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨(プロフ) - うわぁ こんな展開になるなんて…ほんと涙出てきちゃいました。相変わらず素敵な作品ですねぇ〜これからも体調に気をつけて頑張ってください！あと、夢小説を荒らすやつにも気をつけてくださいね (2023年2月12日 21時) (レス) @page40 id: 5406dac44d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年2月8日 12時
