再出発 〜1〜 ページ42
──この度の、フロイド・リーチ選手のドーピングについて、第三者委員会と共に調査を進めて参りました。
現段階では、リーチ選手の失格の取り消しは認められません。
しかしながら、警察からのドーピングに関する重要な報告を受け、リーチ選手の無実が証明出来る事が確認出来次第、失格の取り消しを検討していく所存です。
ドーピングは決してあってはならない行為です。
引き続き、調査・確認・検討を行い、後日皆様にはリーチ選手への正式な対応を発表致します。──
フロイドはAを連れて事務所にやって来た。
「凄い上から目線ね」
メグが運営委員の文書を見ながら呆れた。
「フロイド君に謝罪の一言もないですね…」
「認めたくねぇんじゃね?ドーピング検査室に不正出来る隙を作っちゃってたワケなんだしぃ」
「フロイド。残念だけど、来月の大会の出場は諦めてちょうだい」
「分かってるよ。連盟の選手登録抹消だって取り消されてないんだしさ」
「去年初めて開催されて、せっかく2連覇狙いだったのに…」
「ま、サムがどこまで伸びてくるかだよなぁ」
「サムにとったら初めての大会。とりあえず大会の空気に慣れてもらえれば良いんじゃないかしら」
「ぬるい事言ってんじゃねぇーよぉ」
「こんな事があった後なのよ?アンタだってバッシングされてメンタルボロボロだったじゃない」
「別にバッシングでボロボロになったんじゃねぇよ…。それもあるけど…、もう、パルクール出来ねぇんじゃねぇかって、そっちの方が怖かったのぉ」
「ふんっ。アンタも怖いって思う事、あるのね」
「オレを何だと思ってんだよぉ…。オレだって人間だぜ?みんなと同じ感情持ち合わせてんの〜っ」
「人間じゃなくて人魚でしょっ」
「いちいちうるせぇ〜っ」
「うふふ…。でも、本当に良かった…。選手復帰はまだ時間はかかるかもしれないけど、フロイド君の無実は証明出来たんだもん」
「そうね。あとは、処分取消しがいつになるかね…」
「まぁ、とりあえずは練習始められそうだから、少しサムに付き合ってやるよ。どーせオレはしばらく大会出れねぇし」
「サムも喜ぶわよ」
「可愛がってくれてたキーズとニコルが同時にいなくなっちゃったもんねぇ…。ニコルは追放なのは決まったけど、キーズはどーすんだろ…」
「珍しくアンタが他人を心配するなんて。槍でも降ってくるんじゃない?キーズはウチで再雇用したわ」
「再雇用?」
「ええ。マネージャーとしてね」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月15日 10時