犯人探し 〜9〜 ページ35
「こちらがデザートでございます。デザートは当店からのサービスですので、ご遠慮なくお召し上がりください」
ジェイドが食後のデザートを持って来てくれた。
「ありがとう…ございます…」
「お礼を言うのはこちらの方です、ニコルさん。弟のしでかしたドーピング…ドーピングのせいで…、あなた達にもとんでもないご迷惑をおかけしてしまいました…。こんな事をする子だなんて、思ってもいませんでしたから…」
「お兄さんは…、フロイドの…、フロイドさんを信じてるんですか…?」
「信じたいですよ。ですが、どう考えてもフロイドを狙っての不正は出来ない環境だったのでしょう?いくらフロイドが無実を訴えたって…、証拠が無い以上、信じたくても結果を受け入れるしか無いと思いませんか?」
「そうですね…。結果が出てますからね…」
「でも、僕はまだ諦めていません。もしかしたら優秀な魔法士が関与すれば、すり替え魔法で気付かれないように検体なり検査容器なりをすり替える事も可能なのでは?と、最近気付きましてね。僕はこれからその線を探っていくつもりです」
ニコルの手がピタッと止まった。
「ニコルさん。どうしました?」
「……いえ…」
「手が震えてますよ?」
「なんだろう…。疲れたのかな…」
「そうですよね…。僕の弟のしでかした…ドーピング…、ドーピングのせいで要らぬ神経を毎日毎日毎日毎日擦り減らしておいでですよね…」
「優秀な魔法士なら…あんな厳しいドーピング検査の環境でも、すり替える事は本当に可能なんでしょうか…」
「おや。ニコルさんも、その線を考えていらっしゃるのですか?出来損ない弟の為に…、そこまで考えてくださるなんて…。本当に有難いですよ…」
「いえ…。そんなんじゃなくて…ちょっと気になっただけですから…」
「そうですか。質問の答えを申し上げますと、可能です。例えば…ほら」
ジェイドがニコルの飲んでいた水と紅茶に向かってマジカルペンを振った。
「えっ…」
「これが俗に言う、すり替え魔法です」
水が入っていたグラスには紅茶が入っていた。
紅茶のカップには水が入っている。
「っ……!」
「もしかして、初めてご覧になりましたか?」
「……はい…」
「僕たちレベルの優秀な魔法士でしたら、こんなの朝飯前ですよ?」
「凄い…ですね…」
「僕たちレベルの優秀な魔法士でしたら。の、話です」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月15日 10時