犯人探し 〜8〜 ページ34
「アズールさん。僕はフロイドさんを信じてます」
「サムさんまで…。どう考えても不正は出来ないのでしょう?だったらフロイドが血迷ったとしか考えられません…。あぁ…。Aさんも可哀想に…。学園時代から懸命にフロイドを支えて来たと言うのに、こんな形で裏切られるなんてねぇ…。先輩さん、可哀想だと思いませんか?」
「……そうですよね…」
「僕たちだって…、このまま行けば、路頭に迷う運命です…。せっかく築き上げてきた努力を…、幼馴染のほんの一瞬の気の迷いで……うぅっ…。失礼っ……」
アズールがわざとらしく泣く。
「でも、先輩さん…。どうかフロイドを怒らないであげてください。きっと、彼なりにプレッシャーがあったのだと思います。聞けば事務所も違約金だのなんだのと…、チームも解散の危機かもしれませんねぇ…」
「そんな…。せっかく僕はこんな素晴らしいチームに入れさせてもらったばかりなのに…」
「サムさんも運が悪かったと、諦めるしかないのでは?一人の過ちが、こんなにも沢山の人たちに迷惑、いえ、犠牲者を出しているのです。本当に恐ろしい話です…」
「………」
ニコルは何も話さなかった。
「さぁ、どうぞ」
「いらっしゃいませ。こんな閑散としたお店に来て頂けるなんて何たる幸せ…。今夜は最高のおもてなしをさせて頂きます」
店内に入るとジェイドが出迎えた。
「ジェイドさん…。お久しぶりです…」
「サムさん。練習、励んでいますか?僕の弟のせいで、皆さんには本当にご迷惑をおかけしてしまいましたね…。兄として…、心からお詫び申し上げます…」
「あの…俺…、やっぱり帰るよ…」
「ニコルさんっ」
「なんか…、ちょっと…」
「もしかして、僕たちに同情して気分を害されてしまいましたか?」
ジェイドがとぼける。
「あぁ…。本当にフロイドは…。チームの方たちにこんなにも迷惑をかけることになると考えずにあんなドーピング…ドーピングなんてしたのでしょうかっ」
「2回言っちゃった…」
サムが呟く。
「そうでは無くて…」
「でしたらご遠慮なく、ゆっくりお食事を楽しんでいってください。僕たちが出来るのは、こんな形のお詫びでしかありませんが…」
「………」
「ニコルさん。このお店に同情するなら、いっぱい食べて行きましょうよ。それでお店のオーナーたちが喜ぶなら、今の僕たちに出来るお手伝いじゃないですか?」
「うん…」
「良かった…。お席にご案内いたします」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月15日 10時