犯人探し 〜2〜 ページ28
サムはしばらくその場から動けなかった。
翌日。
今日もサムたちは練習がある。
昨日の事を頭から振り払おうとしてもこびり着いて取れない。
「サム」
「ニコル…さん…」
「昨日、何時に帰ったの？なかなか更衣室に来なかったから先に帰っちゃったけど」
「あ、あぁ…。えっと…、何時だったかな…？ここの片付けしてたら気付いたらみんないなくて…」
「偉いねー、サムはぁ」
ニコルがサムの腕を軽く叩いた。
「サム…。結構…良い筋肉してるね…」
ニコルが真顔でサムの腕を強く握ってきた。
「えっ…。あ…、ありがとうございます…」
「………」
サムの腕を見ながらニコルは表情一つ変えず握り続ける。
「あの…、ニコルさん…。痛いです…」
「君さ…、痛いのとか…好き？」
「え？どういう意味…ですか…？」
「俺は痛いの…好きなんだ。…痛くされるの…って言った方が正しいかな…」
「えっと…、ニコルさん…？」
「きっとね、君も一度経験したら…癖になって…抜け出せなくなる…」
「ニコルさん…っ」
「コイツ、馬鹿だろー？」
後ろから突然キーズがニコルの頭を掴んで来た。
そしてサムに笑いかけた。
「なんだよキーズっ！せっかくサムをドッキリさせようと思ってたのにぃ！」
「サム、コイツのドッキリは気にするな。こうやっていつも人を驚かせて喜んでるヤツだからさ」
「…はい……」
〜今のは…マジなやつだったでしょ…〜
それでもサムは練習に集中しようと頑張った。
それから一週間ほど過ぎた。
フロイドのドーピング騒動は下火になったが、企業との契約問題や、無実証明の証拠集めなどで事務所は大忙しだった。
フロイドとAは、未だに自宅から出ることが出来ない。
外出する時は、クリスに車内へ連れて行ってもらっていた。
「メグのヤツ、犯人探しはその筋に詳しい人に頼んだっつってたけど、誰だよ…」
「メグさんって、太いパイプ持ってるんですね」
２人でお昼ご飯を作りながらそんな会話をする。
「アイツがそんなパイプ持ってるとは思えねぇ…。アズールじゃあるまいし…。アズールんとこも、打撃受けてるって言ってたなぁ…」
「アズール先輩もジェイド先輩も、それでもフロイド君の味方だよ！ジェイド先輩なんて、『Aさん。お店は毎日貸し切り状態でお食事出来ますが、いかがです？』って笑って言ってたし」
「今のジェイドのマネ？」
「うん」
「ふふふ。似てませんねぇ」
「うるさいっ！」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月15日 10時
