苦悩 〜12〜 ページ26
「はい。…はい。……はぁっ?ふざけんじゃないわよっ!……」
メグの話は長かった。
「はぁ…」
メグが電話を切った。
「ウチの抗議を受けて、やっと第三者委員会が動いたわ。ドーピング検査の時に、何か不正が行われた可能性が本当にゼロだったかどうか…」
「良かった…」
「でも、これで証明出来る訳じゃない。それとフロイド。残念なお知らせ。世界パルクール連盟から、アンタの選手登録が抹消されることになった」
「だろうね…」
「永久追放じゃないだけ救われたわね。それと、各企業から違約金の話も出てる。既に広告やCMはどの企業もこぞって取り下げてるけど」
「もう…、オレの選手生命…、終わりだね…」
「何弱気発言しちゃってんのよ。私たちは諦めてないわよ。ねぇ、Aさん」
「もちろんですよっ!」
「それに、ウチの事務所もアンタを手放すつもりは一切ないから。ちゃんと働きなさいよっ」
「仕事なんて、ねぇだろ…」
「それと、私が個人的にこの件について調べる事にしたわ」
「メグが個人的に?そんな力持ってねぇじゃん…」
「うるさいっ。お前のために一肌脱いでやるんだ。有難いと思えっ」
「脱がなくていーよ…」
「もちろん、私には調査のいろはなんて全く分からない。でも、これは恐らくフロイドへの妬み、恨みから誰かが仕組んだ事じゃないかしらって思ってるの」
「選手の人たちなんて、尚更そう思ってる人多いですよね」
「まぁね…。ドーピング引っかかって、オレも誰かにハメられたっ。て、まず思ったもんね〜…。なんの確信もないけどさ…」
「でも、ドーピング検査って、他の人の尿とすり替えるなんて出来ないんでしょ?」
「うん。検査員の前で採尿して、その容器が隠れないように検査員が検査する所まで持ってく。その間に監視員がいっぱいいるんだよ。検査員だって誰がどの選手を検査するかなんてランダムだし、容器だって何個かある未開封の中から選手が自分で好きなの選んで採尿するんだよね。オレがすり替えるのも出来ねぇし、逆に検査員とか他の選手がオレのと他のヤツのをすり替えるのだってムリだよ」
「まずそのすり替える事が可能だったって事を立証しなくちゃいけない訳ね?」
「まぁね。立証出来たって、結局誰がやったか分かんねぇとダメじゃん。もし分かったとして、本人が否定したら証拠も必要。最後は運営委員が間違いを認めるとこまで持ってくんだろ?」
「ええ。それをやってみせる」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月15日 10時