苦悩 〜10〜 ページ24
「三連覇達成は偉業な事です。そのプレッシャーに耐えかねて…。と言う事も否定できませんよね？」
「それは私が証明しますっ！フロイドは毎日コツコツと真面目に練習を積み重ねて来て、皆の期待に応えよう、その一心でここまでやってきたんですっ。それに本当に薬を摂取するタイミングなんてなかったんですっ」
「………」
監督の言葉にフロイドは何も言わなかった。
「フロイド。大丈夫よ。こちらも正式に抗議するから」
「そんな事したってさぁ。オレがクリアだったって証明されない限り…失格だろ…」
「そうですね。クリアを証明することは出来ません。実際に薬が出ていますから。ですからリーチ選手は失格となります」
「そんなっ！クリアになるまで保留してもらうことも出来ないんですかっ！」
「メグ。お前もそれが出来ない事は知ってるだろ…。この検査結果が間違えだったと証明されない限り…、運営委員がそれを認めない限りフロイドは失格だ…」
監督は悔しそうにメグを見た。
「とりあえず、検査…してよ…」
「ええ。では、こちらへ」
「私も同行します」
監督がフロイドに付いて行く。
「A…。こんな事になっちゃって…ごめんね…。ホテルで…待ってて…」
悲しそうにAに笑いながら、フロイドは控室を出て行った。
「フロイド君っ！」
Aはメグに振り返った。
「メグさんっ！何とかならないんですかっ？フロイド君が薬を使うなんて、絶対に絶対にあり得ないんですっ！どうしてみんな信じてくれないのっ！」
「Aさん…。みんな…フロイドを信じてるわよ。でもね…検査結果が出てる以上…チームとしては何も出来ないの…。もちろん抗議はする。でも、現段階では…フロイドの失格は確定するの…」
「そんなの納得出来ないっ！世の中の人だってみんなそう思うはずでしょっ！絶対、何かの間違いなんだってばっ！」
大きな声を出しながら、Aの目から涙がこぼれた。
「みんな…、そう思ってくれたら…良いんだけどね…」
──フロイド・リーチ ドーピング疑惑⁉──
──リーチ選手。三連覇のプレッシャーに敗北か？──
──リーチ選手。トップアスリートとして復帰は皆無⁉──
数日後。
連日、スポーツ紙一面は面白おかしくフロイドの記事を載せた。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月15日 10時
