苦悩 〜9〜 ページ23
「メグさんっ…、そこは触れないでぇっ」
「ま、良いわ」
監督やコーチにも祝福され、控室はしばらく大盛り上がりをみせていた。
「フロイド。表彰式に向けてそろそろ準備するわよ」
「おっけー」
コンコンコン…
控室のドアがノックされた。
「はい」
メグがドアを開ける。
そこにはスーツを着た、いかにも偉そうな雰囲気の男性が立っていた。
「運営委員副会長のバランです」
「副会長が…何か…?」
控室が静まり返る。
副会長は部屋に入り、監督が副会長の近くまでやって来た。
「副会長が直々にお越しになられるとは、尋常ではないですよね…」
監督が厳しい顔をして副会長を見た。
「ええ。先程、レース前のドーピング検査の結果が出まして。リーチ選手の尿から禁止薬が検出されました」
「はぁっ?」
フロイドが眉根を寄せた。
「嘘…。あり得ない…」
Aも呟く。
「オレ薬なんか飲んでねぇしっ!メシだってみんなで食ってただろっ!昨日の抜き打ち検査だってクリアだったじゃねぇかっ」
「これが、検査結果です」
副会長が監督に用紙を渡す。
「……副会長。これは何かの間違いでは?他の選手と取り違えしているとか…」
「それが出来ない事は監督も承知ですよね?選手が検査する時は、必ず立会人が付き、それを見ている監視員もいる。取り違えも不正も出来ない」
フロイドは監督が持っていた検査結果を乱暴に取り、見る。
「こんなの…、絶対ありえねぇっ!オレは本当に薬なんて飲んでないっ!」
「それを証明出来る人は?」
「フロイドは常に誰かしらスタッフがいる中にいました。一人になるタイミングはありません」
メグが強く強調する。
「ふーむ…。だが、結果として出ていますからね」
「もう1回検査しろよ。オレから薬なんて出るはずねぇからっ」
「ええ。その為に今こちらに来たのです。リーチ選手にはもう一度、ドーピング検査をして頂きます。採血もしますので」
「なんでもやってやるよ。気が済むまで検査しろ」
「フロイド君…」
「A。オレがクリアだって、証明してくる」
「残念ですが、今から行う検査がクリアだとしても、レース後の結果はレース前の結果を覆すものにはなりません。もちろん、レース前の尿を更に詳しく分析していきます」
「副会長。フロイドはそんな事する選手ではありません。ここまで本当に実力で上り詰めてきたんだ。三連覇達成のために自ら危険なリスクを負う奴じゃないんですっ!」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月15日 10時