苦悩 〜1〜 ページ15
後ろの方から女性たちの会話が聞こえてくる。
明らかにフロイドの話だ。
しかしAは気付かないふりをした。
会社に着き、一仕事終え、食堂に行く。
「Aさんっ！おはようございますっ」
「おはようございます」
あのおばちゃんが嬉しそうに挨拶して来た。
「明日、遂に発売日ですよっ！」
「あぁ、あのウェアとシューズ？」
「はいっ！申し訳無いんですけど、明日はお店に早くから並ぶ為、有休とらせて貰うことにしましたぁ〜っ！」
「うふふ。フロイド君をいつも応援してくれてありがとうございます。買えると良いですね」
「はい〜っ」
おばちゃんはルンルンで持ち場に戻って行った。
「Aさんも、もうすぐ遠征ですね。三連覇が掛かった大会で、みんなリーチさんに期待してますよ〜っ」
「そうですね。フロイド君もかなり気合い入って練習してます」
「三連覇、応援してますっ」
「ありがとうございます。フロイド君も喜びます」
テレビでは、フロイドのCMが流れていた。
去年と良く似た作りだ。
今年はウェアも販売するのでウェアのアップとシューズのアップのシーンがあった。
「凄い腹筋っ！」
「あの腹筋の元を作ってるのがAさんなのよっ！」
「あははぁ〜…」
Aは笑うしかなかった。
「フロイド」
練習のインターバル中、メグがツカツカやって来た。
「ああっ？」
「サム君がテストに合格したわ。うちのチームに所属する事が決まったの。とりあえずアンタには報告しておくわ」
「そっかぁ。やるじゃーん」
「アンタとの練習はまだまだムリだけど、今度の大会には監督が同行させるって。フロイドの動きを勉強させるそうよ。それまでの練習は邪魔になるからあまり接触させないようにするけど」
「別に邪魔じゃねぇけど…」
「三連覇がかかってるのよ。練習に集中してもらわないと困るわ」
「メグがオレにプレッシャーかけてどーすんだよっ」
「こんなプレッシャーに負けるような選手は、うちのチームには不要っ」
「はいはい…」
メグはツカツカとまたどこかへ行ってしまった。
「メグさん、フロイドへの当たりキツイよなぁー…」
一人の選手がフロイドの元へ歩いて来た。
「そお？アイツいつもあんな感じじゃね？」
「まぁ、俺たちにもキツイけどさぁ。あそこまでは言ってこないよ？」
「三連覇がかかってるウチの看板選手だけあって、しっかり育てたいんじゃねぇの？俺らには関係ねぇけどさっ」
もう一人選手がやって来た。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月15日 10時
