管理栄養士の料理 〜1〜 ページ1
「社食のローストポークの牛バージョンっ！」
「リーチさん、ローストポーク凄く気に入ってたもんね〜っ」
「会社でも人気のメニューだし、そのもっと高級な食材で作られたローストビーフっ…。早く食べた〜い！」
おばちゃんたちがテーブルで興奮してきた時、会場内にアナウンスが流れた。
『披露宴に出席されるゲストの皆様にお願い申し上げます。会場内での動画、写真撮影は可能でございますが、セキュリティの関係上、個人のSNS等を使っての動画及び画像、会場内の様子が分かるようなコメントの投稿はご遠慮くださいますようお願い申し上げます。繰り返し披露宴に……』
「大変ねぇ…」
おばちゃんが呟いた。
「うちの会社も２人を守るために取材とか断ってるって言うじゃない」
「テレビカメラも入らせてないんでしょ？」
「リーチさんとAさんがあんまり大袈裟にしたくないって言ってたみたいだからねぇ。それを考慮した結婚式って事だよね」
「それであのマジカメっ！ファンの気持ちを大切にしてくれるのが伝わるわよね〜っ」
「披露宴の画像もアップされるの、楽しみ〜！」
程なくして、司会者が登場した。
テレビで良く見る人気男性アナウンサーだった。
そのアナウンサーが慣れた様子で自己紹介をし、披露宴が開始することを伝えた。
そこでもまた先程の注意をアナウンスする。
会場内の照明が落ちて行き、静まり返った。
あるあるな登場の方が逆に面白いと言う、良く意味の分からないフロイドの提案で、新郎新婦入場時に良く使われる神秘的な音楽が流れ始めた。
しばらく曲だけが流れる。
すると、１つのドアにスポットライトが当った。
曲の一番盛り上がる直前、司会が大きな声で伝えた。
『新郎新婦の入場ですっ』
披露宴から出席する人たちは２人の姿をここで初めて目にする。
曲のサビに合わせドアが開き、２人が姿を現す。
ライトを浴びながら、会場内へ入って来る。
「素敵…」
「Aさんが…、ドレス姿でフロイドさんと腕を組んで歩いてる…」
おばちゃんたちは感動しながら２人の姿を目で追っていく。
お色直しの予定もない。
挙式で使ったベールだけ外し、Aの頭にはライトで更に眩しい輝きを放つダイヤのティアラだけが載せられていた。
「本当に綺麗…」
大きな拍手で出迎えられた２人がゆっくりと高砂に向かって行く。
２人とも幸せそうな笑顔で歩いて行く。
高砂に到着し、２人がそれぞれの席の前で立つ。
披露宴が始まった。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月15日 10時
