新しい目 〜1〜 ページ10
「さ。フロイドたちが帰ってくるまで、僕たちも元気に過ごしましょうね」
「頑張りますっ」
その日の夕方。
ジェイドから連絡があった。
「Aさん。フロイドの目の状態も問題なく、明日、移植手術が出来ることになりました」
「良かった…」
「手術は朝の10時からで、5、6時間程かかるそうです」
「そんなに…」
「明日はどの時間に連絡出来るか分かりませんが、必ず連絡しますので、それまで待っていてくださいね」
「分かりました」
「では」
電話を終え、Aはソワソワし始めた。
「明日の今頃は…手術が終わってるんだよね…」
スマホを握りしめ、Aは呟いた。
翌日。
アズールがAの教室まで送り、授業を受ける。
教室の時計を見る。
〜9時50分…。もう、フロイド先輩…、手術の準備してるよね…〜
全く授業の内容が入ってこない。
昼休みもエペルと昼食を取っていても上の空だ。
「A？」
「え？あ、ごめんね…」
「心配だよね。でも、きっと上手く行くよ」
「うん。そうだよね…」
「信じてさ、ジェイド先輩の報告を待とうよ」
「ありがとう…、エペル」
放課後。
アズールと寮に戻り、アズールの部屋でお茶を飲む。
「またアズール先輩にお茶淹れてもらっちゃいましたね…」
「今日は特別な高級茶葉で淹れてみました。ふふ。まるでジェイドみたいでしょう？」
「そうですね。でも、凄く美味しいです」
「またはちみつ入れます？」
「はいっ」
また時計を見る。
「手術…終わったかな…」
5時を過ぎていた。
「そうですね。予定では、もう終わっている時間ですが、まだジェイドから連絡はありませんねぇ」
「何かあったのかな…」
「そんなに心配しないで、ほら。はちみつ持って来ましたよ」
「ありがとうございます…」
Aがはちみつをスプーンですくって紅茶に入れる。
「フロイドの目が見えるようになったら、Aさんは何をしたいですか？」
アズールが微笑みながら聞いた。
「そうですね…。なんだろう…。何もかも、やりたいことだらけで迷っちゃいます…」
「ふふ。まずはあなたを見てもらいたいのでは？」
「そうですよねっ！はいっ。私を…、満足いくまで見て欲しいですっ」
「きっと、叶いますよ」
「はい…」
Aは照れ笑いをしながら紅茶を飲んだ。
夜の7時前。
アズールの電話が鳴った。
「Aさん。ジェイドからです」
心臓がバクバクした。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
