有名人の振る舞い 〜6〜 ページ45
会社の出入り口を囲む報道陣から抜け出し、フロイドたちは待機していた高級ワゴン車に乗り込んだ。
「早く出してっ」
メグが運転手に指示を出す。
車内は窓に取り付けられたカーテンで外からは見えない。
しかしその隙間から車内にカメラのフラッシュの光が入り込む。
車はあっという間に報道陣に囲まれてしまう。
外で色々な声が聞こえてくる。
「クソッ…。野次馬どもがっ」
いつになくメグの口が悪い。
「報道陣に囲まれて車出せませんっ…」
運転手が振り返ってメグを見る。
「クラクション鳴らしてっ」
「はいっ」
運転手が必要にクラクションを鳴らす。
「フロイド君…」
後部座席にフロイドと並んで座っていたAが、フロイドの手を握る。
「想像以上に人が多いなぁ〜…」
「それだけお前の人気が上がったって事だっ」
「結婚発表しちゃったから…？」
「Aさん。フロイドが結婚発表したことは私は間違っていないと自信を持っているわ。このタイミングを逃した方が、あなたが今よりもっと大変な対応を迫られていたと思うの」
「これでも？」
「そうよ。あ、私からも、言うの遅くなったけど、結婚おめでとう」
メグがこんな時にサラッと祝福した。
「あ…、ありがとうございます…」
「今度美味しいお酒持って改めてお祝いに行くわ」
「来んじゃねぇっ！」
「アンタにじゃなくてAさんによっ！」
「余計に来んじゃねぇっ！」
「メグさんっ！見てくださいっ」
運転手が声をあげた。
いつの間にか会社の警備員と先程ロビーに集っていた社員たちが総動員して報道陣を何とか下がらせていく。
一人の警備員が運転手に向かって車を出せとジェスチャーしている。
「チャンスっ！行けぇっ」
「へぇ〜。Aの会社の人たちぃ、すげぇ優しいじゃーん」
「こんな事までしてくれるなんて…」
「良かったねぇ〜、A」
「うん…」
フロイドがAをギュッと抱き寄せた。
フロイドたちを乗せた車は新居の近くまで順調にやって来た。
「チッ…。もう割れたか…」
「マジでぇ〜？まだ引越してきたばっかじゃーん…」
「もう報道陣に新居バレちゃったの…？」
フロイドのマンションのエントランス付近には、報道陣がたくさん待ち構えていた。
フロイドがこのマンションに住み始めた事を報道陣から聞いた近所の人たちがフロイドを一目見ようと更に人集りが出来ていた。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
