有名人の振る舞い 〜4〜 ページ43
フロイドはおばちゃんたちに見送られながらAの手を握った。
「えっ。フロイド君…。私まだ勤務中…」
「ねぇメグ〜。Aもう帰っていーんでしょ〜？」
「ええ。Aさんの上司に許可を取ったわ」
「ね？オレと帰ろ」
「でも…」
先輩とおばちゃんたちに振り返る。
「お幸せにぃ〜っ！」
みんな手を振っている。
「今更戻れねぇだろ？」
「……うん…」
「フロイド。少しはファンの気持ちを掴めるようになったな」
「そお？」
「ギリギリ合格点だ」
「ギリギリかよ…」
「今回の世界大会で優勝した上に、今日の会見でファンが激増するぞ。覚悟しろっ」
「うぇ〜っ…」
「フロイド君、頑張ろうっ。私も、リーチ選手の結婚相手として相応しくなれるように頑張るから」
「Aさん、良い心掛けだね。私がお手伝いしてあげるわ」
「Aは今のままでいーのぉ〜！」
「ダメだ！Aさん本人がそう言っているんだ。私に任せろっ」
「メグさん、お願いします」
「ええ。こちらこそ」
メグはAにニッコリ笑った。
「その笑い…怖ぇーよ…」
会社の出入り口付近まで来ると、警備員が慌てて走ってきた。
「報道陣が出入り口を囲んでいますっ」
「予想通りね」
「裏口に車を用意しましたので…」
「別に良くね？オレ、逃げないって会見で言ったじゃん。でもぉ、Aの事を撮るのはダメだよ」
「そんなの無理よ。見なさいっ。報道陣はこぞってAさんの事を撮りたがってるのよっ。ここは裏口から…」
「あの…、私、大丈夫です。フロイド君がこれだけ私を守ろうとしてくれてるんだから、私もフロイド君に応えたいし、さっき言った通り、リーチ選手の結婚相手として相応しい対応を頑張りたいですっ。だから、私も逃げませんっ」
「Aさん…。報道陣は野次馬根性なだけよ？ただ面白がってネタにされるだけ。そんなの分かってるでしょ？」
「分かってます。でも、フロイド君も逃げないって言ってるし、私もそれに付いていきたいんです」
「A…。顔、思いっ切り撮られるし、テレビで流されるよ？」
「フロイド君だってテレビに散々映ってるでしょ！」
「だってそれはオレがパルクール選手だからだよ？」
「その奥さんに、私はなるんだよ？」
「フロイド。Aさんは覚悟したみたいね。良いわ。私は許可する。あとはフロイドが決めなさい」
「………」
「フロイドっ！早く決めなさいっ」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
