フロイドの計画 〜10〜 ページ38
「我が社にテレビ局からあなたとリーチ選手の事について問い合わせが相当数あるのですが、それはご存知ですか?」
「はい…。先程…、聞きました。ご迷惑をおかけして…本当に申し訳ありません…。もし、私がいることで会社に不利益な事などがあるようでしたら…」
「違いますよ。そう言う事で呼んだのではありません。我が社では、あなた達を全力で守ります。社長も先程の会見を観てリーチ選手の人柄に惚れ込んだようです。まぁ、言葉遣いが少し気にはなりますが、それがまた彼の人気の秘訣なのでしょうね」
「えっ……」
「まさかリーチ選手の結婚相手が我が社にいたなんて、誰も思いもしなかったでしょう。ですが、リーチ選手の訴え通り、あなたへの問い合わせは一切受け付けませんので安心して仕事に励んでくださいね」
「ありがとうございます」
Aは副社長に深々と頭を下げた。
その直後、副社長の机にある電話が鳴った。
「はい。……はい…。お受けしてください」
副社長は短く答えて電話を切った。
「リーチ選手のマネージャーさんから我が社に連絡があったそうです」
「マネージャーから?」
「リーチ選手直々に、我が社にご挨拶をさせて欲しいと。私が許可したので、しばらくしたらリーチ選手がお見えになりますよ」
「フロイド君がここに…?」
「良く出来た方ですね。私もぜひお会いしたいです」
「はい…」
「リーチ選手がお見えになったら、また連絡しますので、お仕事に戻ってください」
「分かりました」
Aは副社長室を後にした。
栄養士の使う部屋の前に行くと、先程の食堂スタッフたちがオロオロしていた。
「あっ!Aさん!」
「何かありましたか?」
「リーチ選手がうちの会社に今から来るって、本当?」
「えっ…」
どこからその話を入手したのか、スタッフたちは目をキラキラさせてAを見た。
ブッブッ…
ポケットのスマホに通知が来た。
──今からAの会社行って社長たちに迷惑掛けたこと謝りに行くね。
それと、食堂のおばちゃんたちにも、オレのファンがいるんだろ?
迷惑掛けたお詫びにファンサービスするから、食堂にも寄るね。
おばちゃんたちに言っといて。──
──り──
「あっ…」
焦りすぎて『了解』と入力したかったのに一文字だけで返信してしまった。
〜ま、いっか…。伝わるでしょ…〜
Aはスマホをポケットにしまい、目をキラキラさせている食堂スタッフたちを見た。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月6日 21時