心の変化 〜1〜 ページ4
「ええ。今の所は、フロイドを店に戻す予定はありませんよ」
「……Aが店で寂しがってんじゃねぇの？」
「それは大丈夫です。店は忙しいですし、何かあれば僕がフォローしていますから」
「あっそ……。オレは店にとってお荷物って事ね…」
「……そう受け取ってもらって良いかと。部活は復帰出来ましたが、それは練習だけでしょう？それに、仕事となると責任が生じて来ますからね」
「ふーん。すげぇハッキリゆーじゃん」
「これが現実なのですよ。今夜はAさんの所へは行かないのですか？」
「うん…」
「そうですか。僕はまだ店の書類整理が残っているので、先に寝ていて構いませんよ」
「オレがさぁ。また目が見えるようになったら、店に復帰出来んの？」
「それはもちろん。……移植の事、考える気になったのですか？」
「邪魔者扱いされるの…、ムカつくし、このままじゃ、一生Aを守りきれねぇだろ…」
「気分で言っているのでは無い事を祈りますよ…」
「チッ…」
「移植は月日が経てば経つほど成功率が低くなるそうです。本気で考えるのなら、早めに教えてくださいね。ドナー登録だって、結局はフロイドが断ったのですから、そこから手続きを始めなくてはいけないのですよ」
「手伝ってくれんの？」
「フロイドが本気ならね。僕は初めからそうして欲しかった身ですし」
「分かった…」
「良い報告、お待ちしてますよ」
更に2週間が過ぎた。
「フロイド先輩っ」
「A…。ここ、どこ？」
「保健室のベッドです」
「そっか」
「頭痛、どうですか？」
「うん。大丈夫」
「そうですか…。でも、まだ寝ていてくださいね。私はクルーウェル先生とジェイド先輩に、フロイド先輩が目を覚ましたことを伝えに行ってきますから」
「うん。ありがと」
Aが椅子から立ち上がり、歩き始めようとした瞬間、フロイドがAの左手を掴んだ。
「どうしたんですか？」
フロイドは何も言わず、Aを引き寄せた。
Aの左手を伝い、無理やり寝ているフロイドの上に抱き寄せた。
「うわぁっ…」
Aは抵抗せずにフロイドの上に乗っかった。
「もう…、こんな生活、イヤなんだよ…」
「……こんな生活って？」
「みんなオレに気を使う。目が見えないからやってあげますよ、みたいなさ。上から目線だし」
「私も？」
「そうじゃないのは…分かってるよ…」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
