新しい目 〜10〜 ページ19
「それではフロイドと同じじゃないかっ！」
「時間が無さすぎたのですよ。こうでもしなければ、フロイドの目が再び見えることは無かったのです」
「突然の思いつきとは思えませんね」
「だから、言えば反対するでしょう？」
「当たり前です。一言でも相談してくれたら、他に方法を探す事が出来たかもしれなかったのにっ」
「時間が無かったと言っているではありませんか」
アズールに背を向けながらジェイドはキッチンでお茶の用意を進めていく。
「オレも…、ジェイドの事マジで許せねぇって思ったよ…。一人で勝手にこんな事決めてさ…。でも、オレも同じ事してたんだよね…」
「……まったく…2人して同じ事をするなんて…」
「それが双子なのですよ」
「はぁ…。確かに、ドナーの順番がこんなに早く回って来るのもおかしいとは思ったのですが…、ジェイドがコソコソ動いていた理由がまさかこれとは…」
「早く順番が回って来るよう根回ししていたとでも思っていたのでしょう？」
「まぁ…。そんなところです…」
「双子の僕の眼球なら、フロイドへの拒絶反応も極めて低い事も分かりました。眼球が上手く定着するかどうかは半々だと言うことも承知の上で提供したのです」
「嬉しいだけのお出迎えのはずだったのに…」
「ううん…。A、嬉しいだけでいーんだよ。オレとジェイドでこの事は話つけたから」
「僕たちは蚊帳の外と言う訳ですか」
アズールが鼻で笑った。
「そうですね。ただの兄弟喧嘩ですから」
「今更何を言っても仕方ないですね…。事実、フロイドの目は再び見えるようになったのですから…。素直に喜ぶべきでしょうね…」
「ええ。そうして貰えたら、フロイドの元へ嫁いだ僕の眼球も喜びますよ」
「ジェイド先輩…、ありがとうございました…。私、ジェイド先輩が、こんな事をしてくれるなんて全く知らなくて…」
「ただの兄弟喧嘩です。Aさんが気にすることではありませんよ」
「そ。オレとジェイドが納得してるんだからぁ、それでいーんだよぉ〜」
フロイドがAにキスをした。
「今夜は朝まで寝かせないからねぇ〜」
「ちょっとっ…フロイド先輩っ！」
「ふふふ。今更過ぎて何も感じませんよ」
「やれやれ…。本当に人騒がせな双子だ…」
アズールはため息をつきながらどこか嬉しそうな顔をしていた。
夜。
Aは自室でシャワーを浴び、ワクワクしながらシャワールームを出た。
「お帰りぃ〜」
「フロイド先輩っ！」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
