新しい目 〜4〜 ページ13
「今はとにかくゆっくり休んでくださいね」
「うん。まだ…眠い…」
「ふふふ。眠っていて良いですよ。昼休みに合わせてまたアズールに報告の電話をしますね」
「A、何か言ってた？」
「今朝の電話では、頭痛が残っている事に心配していました。昨日は無事に手術が終わってとても喜んでいましたよ」
「…うん…」
フロイドは微かに光を感じ取れた事に、内心とても嬉しかった。
ホッとしたせいか、またすぐに眠ってしまった。
ジェイドは昼休みに合わせてアズールに電話した。
電話口でAが喜びのあまり泣いているのが分かった。
それから3日が経った。
「リーチさん。ご自分で目を開けること、出来ますか？」
医師が右目のガーゼを外した。
「……どお…？」
「うん。開けられましたね」
「何も見えねぇ…」
「これは？」
医師がまた強い光を当てる。
「この前より、少し明るい…」
「素晴らしい…。少しゆっくりですが、確実に眼球も定着してきていますよ」
「マジで？」
「来週辺りになったら、少し見えるようになるかもしれませんね」
「そっか…。見えるようになるかも…しんねぇんだ…」
「それまではまだガーゼをしておきましょう。毎日私が診に来ますから」
「うん…」
そして翌週。
医師が右目のガーゼを外した。
「ゆっくり、目を開けて見てください」
フロイドは医師に言われた通り、ゆっくりと目を開けた。
「すげぇっ…！」
物凄くぼんやりだが、光も、部屋の様子も見えた。
「どうです？」
「部屋…、チョーぼんやりだけど…見えるよ…。外の光も…分かる…」
「移植手術、成功ですね」
「良かったですねっ、フロイド！」
「マジかよっ…。また…見えるように…なったんだ…」
フロイドは部屋をゆっくり見渡した。
ぼやけすぎて見ているのが疲れる。
それでも光のある世界を見た。
「ジェイドも…何となく見える…」
「それは嬉しいですっ…」
そして自分の両手を見る。
「オレの手…。見える…」
「ええ。凄いですっ…」
「Aに早く教えてやんねぇとっ」
「そうですね。僕がすぐに連絡しますよ」
「うん。頼むね」
「疲れるので、今日はこれで終わりにしましょう。ガーゼを外す時間も、少しずつ増やして行きますから」
医師がまたガーゼを当てた。
──Aさん。僅かですが、フロイドの目が見えるようになりました。
また昼休みにアズールと合流して電話でお話ししましょう。──
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月6日 21時
