見えない生活 〜9〜 ページ9
看護師がいつの間にか数人の男性看護師を連れて戻って来た。
「リーチさん。先生の指示に従ってくださいっ」
男性看護師がフロイドの身体をしっかりと押さえた。
「離せっ！」
フラフラなのにフロイドは抵抗した。
「リーチさん。今から鎮静剤、投与しますよっ」
「やめろっ！オレは帰るんだよっ！」
「ここは病院ですっ。医師の指示に従ってもらいますよっ」
間もなくして医師もやって来た。
フロイドは看護師に腕をしっかり押さえつけられ、その間に医師が素早く鎮静剤を投与した。
「リーチさーん。すぐに楽になりますからねー。ベッドで安静にしていてくださいよー」
「ふざけ…ん…なよ…」
あっという間にフロイドが膝から崩れ落ちた。
男性看護師がフロイドをベッドへ運ぶ。
そして点滴も刺し直す。
「数時間は眠っているでしょう」
医師がフロイドを見ながらジェイドに説明する。
「突然両目を切り取られ、身体が悲鳴をあげているのですよ。頭痛もしばらく続くでしょう」
「そうですか」
「妹さんがいらっしゃるのですか？」
「ええ。カリムさんから先生を紹介してもらったのが、こちらの妹です」
医師がAを見た。
「あの、初めまして…」
「……なるほど…。お会いするのは、初めまして、Aさん」
「…はい…」
医師はすぐに気付いた。
「いやぁ。こんなに素敵な妹さんがいるなんて、リーチさんは幸せですねぇ」
全てを理解した医師が眠っているフロイドをチラッと見た。
「妹さんのためにも、早く治療を終わらせ、学園に戻りたいでしょうに…」
Aはクッキーの入った袋を握りしめ、じっと見つめた。
「ジェイド先輩…。フロイド先輩が目を覚ますまで、ここにいても良いですか？」
「良いですけど、ただ待つだけですよ？」
「それでも良いです」
「まぁ、フロイドも、薬で落ち着けば、Aさんとちゃんとお話し出来るかもしれませんしね…」
「はい…」
「分かりました」
「リーチさん。では、その間に今後の治療方針のご説明をさせて頂いてもよろしいですか？」
「はい。Aさんは？」
「私はここで待ってます」
「一人ですよ？」
「ここは学園と違うでしょ？」
「ふふふ。そうですね。では、僕は先生と少しお話ししてきますね」
「はい」
ジェイドは医師と病室を出た。
看護師の処置も終わり、病室には眠っているフロイドとAだけになった。
Aは椅子に座り、ひたすらフロイドが目を覚ますまで待った。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年6月2日 17時
