フロイド 復活 〜1〜 ページ17
それから1ヶ月が経った。
痛みの波に襲われる頻度も段々減り、Aがほぼ毎日フロイドの元へ会いに行った甲斐もあり、フロイドは順調に回復していった。
義眼も無事に入れることが出来た。
そして、今日はフロイドが退院する日だった。
Aはあえて寮に残った。
フロイドを迎えに行ったのはジェイドだけ。
フロイドが戻って来るまでにクッキーをたくさん焼く。
今日はアズールも含めてみんなでティータイムを過ごす事にした。
アズールもAの手伝いをしてくれた。
「過去最高記録の5回戦ですっ」
大量にクッキーを作った為、5回に分けてオーブンで焼いた。
「ふふ。あの2人がたくさん食べますよ」
「アズール先輩は?」
「僕も頂きますよ。ですが、一日の摂取カロリーを超えない量までにします」
「今日くらい良いじゃないですかぁ…」
「今日くらい、今日くらい。その誘惑の言葉に僕が負けるとでも?」
アズールが微笑んだ。
「はいっ」
「はぁ…。仕方ありませんね。本当に、今日くらい。ですよ」
「ありがとうございますっ」
フロイドを出迎える準備をワクワクしながら進めていく。
午後。
談話室にいると、アズールの電話が鳴った。
「ジェイドからです」
アズールは席を外した。
そして数分で戻って来る。
「Aさん。今からジェイドとフロイドが帰って来ます。まずは学園長に挨拶をしてからこちらに来るそうですよ」
「はいっ。ついに帰って来るんですねっ」
「ええ。これからが、大変になると思いますがね…」
「それでも良いですっ」
「そうですか。では、準備を早く終わらせてしまいましょう」
30分程すると、寮の玄関から声がした。
「ただいま戻りましたよ」
ジェイドの声だった。
Aは急いで玄関に向かった。
「お帰りなさいっ、フロイド先輩っ、ジェイド先輩っ」
「A〜。ただいまぁ〜」
ジェイドの左腕を右手で掴み、左手に白杖を持ったフロイドが笑顔で立っていた。
「久しぶりの感覚〜」
「フロイド。段差が一段あります」
フロイドが白杖で段差を確認する。
「段差なんてあったっけ?」
「ええ。オンボロ寮は以前と何も変わっていませんよ」
「ふーん…」
義眼のフロイドの焦点は合っていない。
どこを見ているのか分からない。
しかし、以前と同じオッドアイの義眼だった。
「談話室にティータイムの準備をしました。行きましょう」
「うん」
白杖で行き先を確認しながらフロイドが寮の廊下を歩き始めた。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年6月2日 17時