経験者 〜2〜 ページ19
「ええ。ただ、彼は輝石の国に住んでいます。すぐに会える距離では無いでしょう?」
「いいえ。それは問題ありません。何しろ、僕たちの在席する学校は、ナイトレイブンカレッジですから」
アズールが自慢げな顔をする。
「闇の鏡…ね…」
「良くご存知で」
「出版社をナメないでいただきたいわ」
スーザンがニヤリと笑った。
そしてフロイドを見る。
「リーチ君。あなたはあの自叙伝を最後まで読んで、何か感じた事はありますか?」
「別に…。だけど、小エビちゃんがこの世界に留まる事が出来るなら、オレは何でもするつもりだよ」
「ウェイさん。小エビちゃんとは、フロイドの…お相手の事です」
アズールが補足する。
「凄い勇気ね…。その小エビちゃんは何て?」
「今、高熱出して寝てるから何も知らねぇよ。それに、この先も教えるつもり無いし」
「…なるほどね…」
「アンタさぁ。凄い勇気とか言ってるけど、オレたちの話し聞いて楽しんでるだけじゃねーの?それより早く筆者に会わせろよ」
「フロイドっ。失礼だぞ」
「良いのよ、気にしないで」
「ウェイさん、フロイドが失礼な態度ばかりして申し訳ありません。彼は彼女が消えてしまう事を恐れるあまり、焦っているのです」
「そんな事ねぇよっ。余計な事言ってんじゃねーぞ、アズールっ」
「それほど小エビちゃんへの思いが強いって事ね…」
「はぁ?さっきから分かった様な事ばっかり言いやがってっ」
ついにフロイドがスーザンに食ってかかった。
「ごめんなさいね。別にリーチ君の事を試している訳じゃ無いけど、本当に小エビちゃんと離れたく無いって気持ちが伝わって来るわ。……私と同じね…」
「どういう…意味ですか…?」
アズールが眉根を寄せた。
「……実はね…。私も経験者なのよ」
スーザンのカミングアウト。
フロイドとアズールが目を丸くした。
「ウェイさんが…、自叙伝の筆者と同じ経験を…?」
「ええ」
「なるほど…。それで、この様な個性的な自叙伝を大手出版社が書籍化した訳か…」
アズールは一人納得していた。
「……」
フロイドは難しい顔をしていた。
「その通りよ。私はあの自叙伝に助けられた。当時は筆者の自費出版だったの。でも、私が筆者と同じ経験をして、筆者はまだこの先、同じ様な人たちが現れるかもしれないと、私の提案した当社からの出版を承諾してくれたの」
「そうでしたか…。それで、他に同じ様な経験をした方は?」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時