経験者 〜1〜 ページ18
フロイドとアズールは出版社の応接室に通され、席につき担当者が来るのを待っていた。
「お待たせしましたっ」
ドアのノックとほぼ同時にドアが開けられ、応接室に飛び込むように担当者が入って来た。
アズールが立ち上がる。
フロイドも面倒臭そうに立つ。
「初めまして。昨日お問い合わせさせて頂いたアズール・アーシェングロットです」
「あなたがアーシェングロットさんですか。初めまして。私はスーザン・ウェイと申します」
スーザンはフロイドを見た。
「ああ。こちらはフロイド・リーチです」
アズールが笑顔で紹介する。
「どーも…」
「初めまして、リーチさん。どうぞお掛けください」
スーザンが席をすすめた。
スーザンは50代くらいだろうか。
気の強そうな顔をしている。
長い髪をきっちりとまとめ上げ、黒いパンツスーツを着ている。
かなりのキャリアの様に見える。
「学生さんと聞いて驚きましたよ。しかも本当に私を訪ねて来てくださるなんて。この本への問い合わせはたまにあるのですけど、大体が冷やかしで…」
「こちらこそ、お忙しいところ僕たちのためにお時間を割いて頂きありがとうございます。自叙伝の内容をもっと詳しく知りたいと思いまして問い合わせをさせていただきました」
アズールが慣れたように大人相手に会話をしていく。
「冷やかしではないようね」
「もちろん、そんなことしませんよ。僕たちは自叙伝の内容を信じていますから」
「それは嬉しいわ。それで、どんな事をお聞きになりたいのかしら?」
「単刀直入に申し上げます。筆者がご存命なのであれば、直接お会いしてお話しを聞きたいのです」
「そう…。でも、何故あなたたちはこの自叙伝を信じるの?何も根拠も無いと思うけど?」
アズールがフロイドを見た。
「あのさぁ…。自叙伝に書いてあった事と、似た事がオレに起きちゃったんだよね…」
スーザンがフロイドの言葉に目を細めた。
「似た事って?」
「異世界から女性がやってきたんです」
アズールが答えた。
「いつ?」
「1ヶ月ほど前に突然僕たちの学園に現れました。しかし、3日後には消えてしまいました」
「なるほど…」
「それが2日前にまたその女性が現れまして」
「何かに噛まれてた?」
「うん…。飼ってるウツボだって…」
スーザンは黙った。
しばらく応接室が静かになる。
「分かりました。先程のアーシェングロット君が言っていた筆者の事だけど…。彼は生きています」
「本当ですか!」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時