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フロイドの毒 〜8〜 ページ14

アズールはソファーから立ち上がり、談話室を出て行った。

「………」

フロイドはタブレットを見つめた。





「小エビちゃん…」

タブレットを持ってフロイドはAの部屋に戻った。

首を触る。

「熱いね…」

左手の傷を見る。

「変わらないね…」

Aはぐっすり眠っている。

フロイドはソファーに座り、タブレットで『異世界の毒』を読み始めた。



──これは筆者の自叙伝である。
この本が、作者と同じ様な思いをしている人たちに、少しでも役に立てば幸いだ。──

「怪しすぎるだろ…」

冒頭の数行でフロイドは読む気が失せた。
しかし、アズールが出版社に問い合わせまでして担当者と会うチャンスを作ってくれた。
読まない訳にはいかない。

しかし、読み進めて行くと、アズールが言っていた通り、毒についても書き記されていた。

──彼女の持っている毒のお陰で私は異世界に住む彼女と出会う事が出来た。

彼女と私が恋に落ちるまで、時間はかからなかった。
まるで二人が出会うのが決まっていたかのように。

彼女は、彼女の世界で蛇に噛まれて私達の世界にやって来たのだ。──

「蛇…」

──傷が消えると彼女は消えた。
そしてまた蛇に噛まれて戻って来た。──

「小エビちゃんと一緒…」

いつの間にかフロイドは、自叙伝を食い入るように読み進めていた。

──彼女の毒は、傷と共に消える。
私は彼女の体内から毒が消えない方法を探した。──

フロイドが知りたい部分だ。

──ある時、彼女から私を異常に求める事があった。
彼女は私に毒をくれと言ってきた。
私には何の事なのかすぐには理解出来なかった。──

先が気になる。

──彼女の言う毒とは、私の体液だったのだ。──

衝撃的事実。
フロイドは血の気が引いた。
それでも読み進める。

──私は彼女に体液を与えた。
すると彼女はその晩から三日間、高熱を出した。──

「えっ…」

──三日間、高熱にうなされ続けた彼女は、ついに私の毒を体内に留める事が出来た。
蛇に噛まれた傷は残ったままだった。──

「マジかよ…」

フロイドは眠っているAを見た。

「小エビちゃん…。オレ、本当に…毒、持ってたみたいだね…」

──しかし私の毒は完全ではなかった。
数週間から数ヶ月と、期間はまちまちだが、傷が消えかける事がある。
その都度、私は彼女に体液を与えた。
高熱は出さなくなったものの、体液を与えた後は傷がくっきりと浮き出てくるのだ。──

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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時

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