フロイドの毒 〜9〜 ページ15
──だが、それを目安に彼女に私の体液を与え続ける事で、彼女はこの世界から消えずに済んだのだ。──
「いきなり見つけたじゃん…」
フロイドは自叙伝がフィクションではないと思った。
あまりにもAとの共通点が多い。
フロイドは最後まで読み進めていく。
──ところが、数年程すると、私の体液を与えても、傷が消えていく速度が早くなり始めた。
彼女はこの世界から消える事に恐怖した。
私も彼女を失う事を恐れた。──
雲行きが怪しくなる。
フロイドは焦りを抑えつつ、丁寧に読んでいく。
しかし、フロイドの表情は少しずつ暗くなっていく。
しばらくして。
フロイドはタブレットを閉じた。
「はぁ…」
フロイドが静かにため息をついた。
ソファーから立ち上がり、Aの前に行く。
「小エビちゃん…」
「……ん…」
「熱、計ろっか」
「うん…」
少し反応するAの熱をフロイドが計る。
「40.1℃。下がらないね…」
「熱いの…」
「うん。スポーツドリンク、飲む?」
「飲みたい…」
「氷枕も持ってくるね」
「頭…痛いの…」
「そうだね…。ツラいね…」
フロイドは優しくAの頭を撫でた。
「ちょっと待っててね…」
キッチンに急いでスポーツドリンクと氷枕を取りに行く。
そしてまたスポーツドリンクをAに飲ませる。
恐らくあと2日間はこれの繰り返しになるだろう。
「抱っこ…」
「うん」
スポーツドリンクを飲ませてAをベッドに寝かせると、またAが呟いた。
フロイドは優しく抱きしめる。
「怖いよ…。消えちゃう?」
「ううん。消えない。オレの毒、本当にあったみたいだよ…」
「本当に…?」
「本当。でも、小エビちゃんをいつも傷つけなくちゃいけない…」
「うん。…消えないなら…、良いの…」
「痛いんだよ?」
「うん…。噛まれるの…好き…」
「ふふーん…。小エビちゃん、面白いねぇ…」
「頭…痛い……」
「うん。またゆっくり寝ようね…」
「抱っこは…?」
「うん。今してるよ…」
「そっか…」
Aはまた安心したところですぐに寝息をたて始めた。
Aのおでこに氷枕を置き、フロイドはまたソファーに座る。
しばらくぼーっと窓の外を見つめる。
そして、スマホを出して電話を掛けた。
「アズール?……うん。読み終わったよ。……たぶん本当の事書いてあるっぽい。………うん。そーだね。会ってみるよ…」
フロイドは電話を切った。
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月23日 16時