フロイドの毒 〜10〜 ページ16
少しすると折り返しアズールから電話があった。
「……うん。分かった。明日10時ね……。………うん。助かるよ。小エビちゃん一人には出来ないから……」
電話を切り、フロイドは大きなため息をつく。
「はぁ……。一筋縄じゃ…行かないんだね…」
ソファーの背もたれに深く寄り掛かって上を向いた。
〜でも…、小エビちゃんを失うくらいなら……〜
翌朝。
フロイドは昨晩もAの部屋のソファーで寝た。
夜中も起き、熱を計り、水分を取らせ、抱っこした。
起きてすぐにAの前に行く。
「小エビちゃん…」
Aは眠っている。
手の傷を見る。
「昨日より…傷がくっきりしてる…」
熱も計る。
「39.9℃…」
「頭…痛いの…」
「小エビちゃん、起きた？」
「消えてない…？」
「うん。オレと一緒にいるよ」
「…そっか…」
「スポーツドリンク、飲もうか」
「抱っこが良い…」
「うん。じゃ、抱っこ終わったら、ちゃんと飲もうね。薬も…」
「抱っこは…？」
「今するよ」
物凄い甘えぶりだ。
それにフロイドが付き合っている。
今までのフロイドではあり得ない光景だ。
「どう？」
「…ん…」
「嬉しい？」
「うん…」
「オレも嬉しい」
「ここに…いる？」
「………」
フロイドは答えに迷った。
このあとアズールと出かける。
しかも出版社の担当者に会う。
「どっか行っちゃう？…私は…？」
「うん。大丈夫…。ずっと…一緒…」
「…そっか…」
「うん。薬、飲もうか」
「抱っこは…？」
「薬飲んだらまた抱っこしてあげる。だからちょっと我慢だよ…」
「我慢…」
「そ。良い子に出来たら、抱っこだよ…」
「うん…」
フロイドは念のためウツボの抱き枕をAの目の前に置いてあげた。
Aはそれを抱っこした。
その間に急いでキッチンに行く。
階段を降りるとちょうどジェイドが来た。
「フロイド。おはようございます」
「おはよう、ジェイド…」
「フレンチトースト持ってきましたよ」
「サンキュー…」
「Aさんは？」
「変わんない。それに、すっげぇ甘えて来んの…」
「そうですか。そんな状態で、フロイドが出掛けてしまって大丈夫でしょうか…」
「あのさぁ…」
「ふふふ。言いたいことは分かっていますよ。出来る限り、やってみましょう」
「うん。よろしくね」
フロイドはジェイドをキッチンに待たせ、Aの部屋へ戻った。
「小エビちゃん…」
「抱っこは…？」
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年4月23日 16時
