フロイドの決心 〜5〜 ページ16
「家で飼ってるウツボは、茶色なんだけどな…」
「ウツボ飼うとか、変な趣味してんねぇ〜」
「ウツボ…、大好きなので…」
「ウツボのさ。何が好きなの?」
「それは…、あの細長いフォルム、鋭い目、大きな口、鋭い歯、そして餌を食べる時のあの凶暴さ…!たまらないです〜っ…」
「へぇ〜。オレも、ウツボだよ?鋭い歯もあるしぃ、凶暴かもしれないよ〜?」
フロイドがわざと歯を見せて笑った。
「っ!」
思わずAがフロイドの鋭い歯に見入ってしまった。
「小エビちゃんの手、ウツボに噛まれた痕だろ?」
「えっ…?…あ…、はい…。いつもはおとなしい子なんですけど」
Aがウツボに噛まれた傷を触った。
「ふーん。……ねぇ。その傷、見せて」
「はい…」
Aはフロイドの前まで行って手を差し出した。
フロイドがAの手を持つ。
「オレの横に座んなよ」
「はい…」
Aはフロイドの横に座って黙ったまま手をフロイドに触られていた。
「結構デカいヤツなんだね」
「分かるんですか?」
「うん。歯型から大体の大きさはね。名前、何て言うの?」
「ウツボちゃん…です」
「何それ〜?そのまんまじゃ〜ん」
「良いんですよっ…。ウツボを感じたいからあえてそのままの名前にしたんですから…」
「本当にウツボが大好きなんだ〜。…やっぱりさ、小エビちゃんはオレに会いにこの世界に来たんだよ〜!」
「確かに…、そんな気がしてきました…。ウツボの人魚に出会えるなんて…。こんな幸せな事があって良いんでしょうか…」
「いーのいーの!じゃぁさ。これから、オレといっぱい楽しいことしよーね〜!小エビちゃん!」
屈託のない笑顔でフロイドはAを見た。
「…はい…」
その笑顔にAの鼓動が速くなる。
夕食はフロイドと二人で大食堂で済ませた。
やはりAは注目の的だった。
しかし、常にフロイドが側にいるため、誰も話しかけて来ない。
フロイドの強さが浮き彫りになっていた。
オンボロ寮のシャワールームも掃除出来たので、快適にシャワーを浴びることが出来た。
「あの…フロイド先輩。目覚まし時計とかって…無いですかね…?」
「何で?」
「明日の朝起きるのに、目覚ましが無いと…起きれなくて…。スマホも持ってないし…」
談話室で二人で雑談していたAが、ふと思った。
「あー。今から探すの、めんどくせぇじゃん。オレが朝起こしてあげる。何時?」
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作者名:魅樹 | 作成日時:2023年4月19日 9時