小さな魔法士 〜1〜 ページ10
浴室からサクラが瞬間移動してきたのだ。
「もうっ！お風呂に戻りなさいっ！」
「え〜。ママも行こうよ〜…」
「はぁ…」
その時、ジェイドがバスタオルを巻いてリビングに走ってきた。
「サクラっ！急に浴室からいなくなっちゃいけませんよっ！ほら。お風呂に戻りましょう」
ジェイドがサクラを抱き上げる。
「サクラ。ママも入るから、パパとお風呂に戻ってて」
渋々ソファーから立ち上がり、Aはサクラの頭を撫でた。
「うんっ！ママ、待ってるね〜」
「A…」
「大丈夫だよ、ジェイド君」
Aはジェイドに微笑んだ。
浴室に戻ったジェイドは、サクラとぬるい湯船に入った。
湯船には、たくさんのおもちゃが浮かんでいる。
「アヒルさ〜んっ」
サクラがアヒルのおもちゃを持って、勢い良くアヒルの口から水を飛ばした。
「ふふふ。サクラはアヒルさんがお気に入りですねぇ」
ジェイドがサクラの水遊びを見守っていた。
その時。
バシャーンッ！
「サクラっ！」
突然、サクラが湯船の中に沈んでしまった。
ジェイドが咄嗟にお湯の中に潜った。
「っ！」
ジェイドがすぐにサクラを抱き上げた。
「サクラ…」
「パパ〜っ…。なぁに？このかっこう…。サクラ、お魚さんみたいだよぉ…」
サクラが泣きそうな顔をした。
「ジェイド君っ！何っ？今の音っ」
Aが血相を変えて浴室のドアを開けてきた。
「えっ？サクラ…」
ジェイドが抱き上げたサクラが、人魚になっていた。
「ウツボ…」
「ええ…。ウツボ…ですね…」
「ママ〜っ…」
サクラが自分の変身に驚き、Aを見た。
サクラは間もなく泣く。
「ふふふ。サクラ。泣かないでよーくパパを見ててくださいね！」
ジェイドがサクラを抱き上げたまま、人魚に変身した。
「どうです？サクラと同じお魚さんになったでしょう？」
「サクラと…パパ…、おんなじ？」
「ええ。同じですよ」
サクラが初めてウツボの人魚になった日だった。
「ママもおんなじ？」
「うふふ。見たい？」
Aも人魚に変身した。
「ママ〜…。なんか…ちがうよぉ〜っ！タコさんになっちゃったぁ〜…」
サクラが寂しそうな顔をした。
「ママだけタコで…ごめんね……」
Aはため息をついた。
「ふふふ。今日はサクラの人魚デビューの記念日ですね」
ジェイドは小さなウツボの人魚を抱き上げたまま微笑んだ。
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作者名：魅樹 | 作成日時：2023年4月9日 22時
