▼ ページ23
.
ASAHINA GARAGE
「…その、ララっていう女に…簡単なおつかいやって言われて。で…何ちゅーの?…こんな小さい金属のケースで、それを男に渡せって言われて…」
「…中身は?」
「SDカードや。…それをいきなりバッて横取りされて…。そいつ追いかけたけど、逃げられてもうて…気付いたら、女も消えとったわ…」
「取った奴の顔は見たのか?」
「いや…フードを深く被ったった…」
「はぁーーーー……テッツ!どう思う?」
「…闇取引に利用された。そういうことですよ。」
「じゃあ…奪った奴は…」
「そういうのは、よくある…普通に考えたらそうなんですけど…」
「…なんか妙だ…もう一枚裏があるかもな…。」
ダンに事情を聞きながら、不穏な空気が流れ、各々が顔を見合わせる中、足音が聞こえてきた。
「しばらくだな。」
ガレージの入り口から声をかけられて目をやると、全員が驚いて立ち上がった。
「…ノボル…?」
「お前…」
「連絡もよこさないで…俺たちがどんだけ心配したと思ってんだ…」
「…俺は今、家村会の人間だ。」
「…家村会…?」
「家村会って…あの、九龍グループの…?」
「嘘だろ…ノボル…?…なんでお前が…」
問いかけるヤマトを無視して、ノボルはガレージ内に歩き始め、言葉を発した。
「今後SWORD地区は九龍グループの一つ、家村会の管理下に置くことになった。理由はケツ持ちがいないことによる治安の悪化、SWORDと呼ばれるチームの乱立。それらの悪影響が家村会のシマへと拡散するのを防ぐため。逆らう者は容赦なく潰す。それが嫌なら、我々の傘下に入ることだ。お前らが生き残るには、それしかない。以上。」
周囲を見渡しながら、ノボルは淀みなく言い切った。
その姿をじっと見ていたコブラは、ノボルの話が終わると、鼻で笑い、ノボルの元へと歩み寄りながら、話し始めた。
「機械みてぇにぺらぺら喋りやがって…」
「…一晩だけ時間をやる。よく考えるんだな。」
スーツの内ポケットから名刺を取り出し、コブラに差し出すが、コブラはノボルを見つめたまま、受け取ろうとはしなかった。
一瞬視線を彷徨わせたノボルは、名刺から手を放し、名刺がカサリと音を立てたことも気にせずに、外へと歩みを進めた。
「…ノボル!せっかくだ。家に上がってけよ!母ちゃんのおにぎりでも、久々に食ってけって。」
ヤマトの声に足を止めたものの、ノボルが振り返ることはなかった。
151人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2016年10月19日 7時