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「A、帰るぜィ」
ピチャン、と新緑の葉に雨が滴る。
つい先程まで降っていた大雨は嘘のように退散し、今や晴れやかな太陽がその顔を覗かせていた。なんだか私の心情みたいだなぁなんて思うのもそこそこに、鞄を肩から提げ帰る気満々の総悟にごめんと言うようにパチンと手合わせ、小さく謝罪を述べた。
「ごめん、先に帰ってて。ちょっと用事があるの」
すると、途端にその赤い瞳を細めた総悟は勘繰るように鋭く言葉を放った。その言葉に、思わずうっと息を詰まらせる。
「……それは、あの中二病野郎のとこに行くからかィ」
「……、そうだけど」
渋々頷けば、苦虫を噛み潰したような顔になった総悟は、暫し沈黙を貫いてからキッと目を輝かせた。獰猛に光るそれに、再び怖じ気付く。……が、次いで飛んできたのは批判の言葉ではなく、諦めのものだった。気遣うような、そんな余韻を残している。
「今日、晩飯作りに来いよ」
「……!う、うん、もちろん!」
「じゃ、また後で」
「うん、バイバイ」
小さく手を振り総悟が教室から出ていったのを確認するや否、私は「はぁ〜〜っ」と盛大な溜め息をついた。緊張からか、はたまた安堵からか。何にせよ、総悟に振り回されているのは明白だ。その言葉一つにときめいてしまったり、その言葉一つに喜ばされたり。
──けれど、それは“彼”も同じことで。
「高杉くん、いつまで拗ねてるの?」
「拗ねてねェ」
「それを拗ねてるって言うんだよ」
「……」
案の定、屋上を訪ねれば高杉くんがそこには居た。雨上がりの夕暮れ空を背景に、格子のような柵に背を預けている高杉くんは何故だか大人びた印象を強く与えてくる。
その後暫し事情──劇について──を説明すれば、やがて面倒臭そうに半眼を眇め、とうとう本音を口にした。
「俺ァ小人なんざやりたかねェんだが」
「ま、まあまあそうは言わないでよ……」
「……それに、王子役なら貰えるだろォが」
その言葉に疑問符が浮かぶ。
何が?誰に?何の?そんな疑問が次から次へと思い浮かぶ中、珍しくも悪戯っぽく、けれど嘲笑うように凄絶に唇を歪めた高杉くんは、私の耳許で囁いた。
「……お前ェの唇を、な」
その言葉が脳裏に焼き付いたのは、言うまでもないことだろう。
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あるの(プロフ) - 銀魂LOVE♪の神紫ダヨさん» コメントありがとうございます!そして返信遅れてしまいすみません!そうですよね、高杉さんはとても魅力的でカッコいいですからね!神威も沖田さんも迷ってしまいますよね(笑)今後の展開も見守ってくださると嬉しいです! (2018年4月23日 20時) (レス) id: 59996c7325 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - インクさん» 返信遅れてしまいごめんなさい!沖田さんにとってはとても美味しいことになりましたね、はい、アニメ銀魂はいつ見ても面白いです…!!!すみません、初の合作ということで至らない点もあるかと思いますが、精一杯頑張っていきますのでよろしくお願いします(*^^*) (2018年4月23日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - …どうしよう、話がわからない…。 (2018年4月22日 22時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
銀魂LOVE♪の神紫ダヨ - あぁいつ見ても晋助様はス・テ・キ♪あっ神威もステキ!かっこいい!(キスなら晋助様と、神威がいい..カナ!? (2018年4月6日 22時) (レス) id: 85fc3d6f11 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田の発言が裏目に...いや、沖田にとっては万々歳か...とりあえずアニメ銀魂見直したら面白かったんでまた見てきます (2018年4月6日 19時) (レス) id: 2fb63eb0d6 (このIDを非表示/違反報告)
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