【銀魂】アオハル

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──いけない。これは本当にいけない。
心の中で呪詛のようにそう呟いた私は、目の前で繰り広げられている光景をもどかしく歯噛みして睨み付けていた。そして、そこでは何があったかというと。

「桜庭サンったら人気者だねぇ、オジサン羨ましいわ」

「嫌み言わないでよ白髪頭」

「さらっとひどいな」

ニタリと笑う銀髪の悪魔が、実に面倒臭そうにやれやれと肩を竦める。その理由はご察しの通り、件の学園祭の出し物についてだ。このクラスでは色々と揉めたものの、結論はやはり演劇というところに収まったのだった。因みに私は反対派の筆頭だが。

そして早速役割を振っていたところで今に至る。けれど、何故揉めていたかというと。それには、至極単純な理由があって。私は陰鬱な溜め息をつき手元の小さな紙に視線を落とす。

そこには紛れもなく"白雪姫役"と記されており、それを所持している人物こそが劇の主役──つまりは白雪姫を演じることになっているのだ。単純に「くじにしよう！」と自らがそこら辺にある木Aなどといった悲しい扱いを受けているそれに当たりたいが為に提案したものだから、殊更に断りにくくなってしまったのである。

私が主役を?いいや、あり得ない。
だがしかし、問題はそこではなくて。

「俺が王子役でィ」

「俺だっつってンだろ」

何故か、王子役と書かれた紙が二枚紛れ込んでいたことだ。それが運悪くも総悟と高杉くんの元に辿り着いてしまい、今現在今期MAXの仲の悪さを見せる彼らにとっては格好の喧嘩の火種となってしまって。互いが互いに主張しあい、最早事態は収束がつきそうになかった。

即座に銀八先生に詰め寄れば、目を逸らし何のことやらと口笛を吹いていたので十中八九犯人は銀八先生と見ていいだろう。

けれど、それともまた別にクラスからは黄色い歓声が上がっていた。

「きゃーー!Aさん羨ましーー！」
「イケメン二人に奪い合われるなんてーっ！」
「私も白雪姫役になりたい！ずるい！」

等々、私が憎む役を羨む声ばかりだった。
変わるよ変わるよと縋りつけば、背後から忍び寄ってきた銀八先生に「だめ」と小さく怒られる。喚き自分の席へと引き戻される最中、ふと総悟と目が合った。顔に何かついてたかな訝しく思ってから、彼が爆弾発言を落としたのはそれから一秒後のことだった。

「──なら、Aはどっちがいいですかィ。"目覚めのキスをされる相手"」


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