No.035↓【メイドと黒歴史】 ページ36
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「Aちゃんももう三年生かぁ……なんか早ェな」
それは、とある休日のこと。
ふとそんなことを口にした坂田さんは、まるで思い出に記憶を馳せるかのようにしみじみと呟いた。すると、何を思い出したのか沖田さんがくすりと笑う。嫌味を添えて。
「そーいえば、Aっていつ此所に来やしたっけ?随分と生意気だったことは覚えてやすケド」
わざとらしく棘のある言葉で私に笑いかけてきた。憎たらしいその顔面をぶん殴ってやりたい衝動に刈られるも、深呼吸で荒波のように暴れている鼓動を抑え、言う。
「……今さらその話を持ち出すのはなしですよ。あの頃は色々とあったんです、放っといて下さい」
なんて嘯いて話題に終止符を渡してやろうとした____が。やはり、彼らは意地悪な人間の象徴なのだろうか。゛敢えて゛とでも言いたげに口を開いたのは、神威だった。
「俺は昔も今もAが好きだよ?まァ、あの頃はちょっと無愛想だったけど……。あれはあれでよかっなァ」
なんか、そんな感じのことを前にも誰かに言われたような気がするのだが………。ひとまずそれは置いておき、私は反論しようと口を開こうと……。
「て言うかさ、Aちゃんってなんでこんなトコで働いてンの?」
「それはずっと気になってやした。あっち系の店でバイトした方がよっぽど──」
反射的に飛び出した私の右ストレートパンチが、沖田さんのみぞおちに炸裂した。妙な断末魔をあげながらよろけた沖田さんの身体を支えてやると、恨めがましそうに一瞥されるが気にしない。……気にしちゃいけない。
これは正当防衛だ。悪くない。
そう自らに言い聞かせ、私は紅茶を啜ると。
「ぶはぁッッ、何ですかこれ!さては沖田さんですね、流石にこの仕打ちは酷いと思います!」
舌にじんわりと苦い味が広がった。多分……唐辛子とかそんなところだろう。つい先ほどまで味わっていたまろやかな紅茶が、何とも言えない味に変化していた。辛いものが特に苦手な私は、一瞬にして涙目にる。それと共に、盛大に吹き出した紅茶が白いブラウスに染み込んでいく。声にならない悲鳴をあげていると、神威がポツリと呟いた。
「A、下着見えてるよー」
「もう泣いていいですか……」
「うん、啼いていいよ。俺、Aちゃんとなら5ラウンドぐらい行けそうだから」
そんな冗談とも受け取れない坂田さんの言葉に、私は最早言葉を失った。
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あるの(プロフ) - ささかさん» コメントありがとうございます、ささかさん!いつまでも待っていて下さるのですか?!ありがとうございます^^はい、できるだけ早く続編を作り直しますので、それまでは暫しお待ちください! (2018年1月6日 16時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
ささか - 作者さん、色々とお疲れ様!でも私はいつまでも待ってますから!ゆっくりでいいので続編作るの頑張って下さい! (2018年1月6日 15時) (レス) id: 94a7e06d27 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - たらぴさん» コメントありがとうございます!はい、念願の初殿堂入りを果たすことができました…!応援までありがとうございます^^たらぴさんのお言葉には励まされるばかりです! (2017年12月24日 17時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
たらぴ - 殿堂入りおめでとうございます!これからも頑張って下さい(^^)/応援してます! (2017年12月24日 17時) (レス) id: dcfd3554f9 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - 高杉るなさん» 了解致しました^^ご提案ありがとうございます!高杉さんと遊園地…とても素敵なお話ですね!できるだけ早めに執筆致しますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです! (2017年12月6日 7時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
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