No.033 ページ34
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前言撤回、二人は成長も進歩もしていなかった。
先程の自分を100回ぐらい殴りたい……と弱気な小言をもごもごと言った私の言葉は、最早手綱を手放した彼等には届かない。微かに目を見開いて……そして諦めたように瞑る。そんな行動を繰り返しながら、私は地獄絵図のようなこの時から早く解放されたいと心から願っていた。
何故ならば、今、私の眼前では。
「あり、Aどしたの?食べないの?」
悪魔の如き勢いで寿司を口に放り込んでいる神威と、同じくして張り合うようにもごもごと凄まじいスピードで皿にのっていた寿司を完食していく沖田さんの姿が。人目を惹き付けるどころか、店員さんたちはお祭り騒ぎのように忙しく行き交い、物珍しそうに写真を撮る輩もチラホラと。因みに言うと、私は一皿も食べれていない。目の前に積まれた天井に届きそうな皿たちを見つめ、後悔の念に細長く溜め息を吐く。
……と、そんな時だった。
「……あれ?Aちゃん?」
ふと名前が呼ばれる。私の名前を呼んだ声にも聞き覚えがあって。クラスメイトの。いつもよく声を掛けてくれる、クラスの人気者の生徒。ふわりとした髪を揺らして、にこりと微笑むその姿は天使のよう……なのだが、今此処で魔界大戦争が勃発しているので私はあわわとフリーズしていた。
「その人たち、もしかして彼氏?」
「「そうです」」
「ちちちっ、違いますから!!」
必死に否定するも、くすくすと笑われてしまって。仲が良いんだね、しかもカッコいいじゃないと耳許で囁いたその子は、「お邪魔しちゃったね」と呟いて。
「勘違いです、本当に違うんだって!!ただの同居人!」
「そうでィ、一つ屋根の下連夜男の身世話するだけの仲でさァ」
「その言葉じゃ誤解を招きますって!!ほら、神威も何か言ってやって下さいよ!」
「んー、そうだね、この前なんか俺にマッサージをしてくれたよ。真夜中に、二人っきりで。電気とかも消して」
「違う!!お前はもう口を開かないで!!余計誤解を招くから!!」
「そ、そうなの……?」
戸惑い気味の彼女に違うんです本当にと後押しすれば、微妙な顔で去っていったので一安心。けれど、周りの人からの視線が痛いので取り敢えず店を脱出しようとした手を……二人に同時に掴まれた。そして。
「夜はまだこれからでさァ」
「夜はまだこれからだよ?」
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あるの(プロフ) - ささかさん» コメントありがとうございます、ささかさん!いつまでも待っていて下さるのですか?!ありがとうございます^^はい、できるだけ早く続編を作り直しますので、それまでは暫しお待ちください! (2018年1月6日 16時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
ささか - 作者さん、色々とお疲れ様!でも私はいつまでも待ってますから!ゆっくりでいいので続編作るの頑張って下さい! (2018年1月6日 15時) (レス) id: 94a7e06d27 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - たらぴさん» コメントありがとうございます!はい、念願の初殿堂入りを果たすことができました…!応援までありがとうございます^^たらぴさんのお言葉には励まされるばかりです! (2017年12月24日 17時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
たらぴ - 殿堂入りおめでとうございます!これからも頑張って下さい(^^)/応援してます! (2017年12月24日 17時) (レス) id: dcfd3554f9 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - 高杉るなさん» 了解致しました^^ご提案ありがとうございます!高杉さんと遊園地…とても素敵なお話ですね!できるだけ早めに執筆致しますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです! (2017年12月6日 7時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
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