No.025↓【メイドとロン毛】 ページ26
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「あの……もう帰ってもらっていいですか?」
そんな呟きは、彼には聞こえないようだ。
私は、先程から……いや、約30分前から一向に帰る気配を見せない一人の男性を訝しげに流し見た。所謂、セールスマンと言う人なのだろう。奇特とも言える長い黒髪。なのに、なぜかピシッと似合っている黒いスーツ。そして、その手には____
「真夜中に笑うエリザベス人形は要らぬかと訊いているんだ。今ならなんと、定価の三割引!!出血大サービスで、────」
白いペンギンのような風貌の人形を、溢れんばかりに抱えていた。それを嬉々として売り付けてくるロン毛の男性に、私は曖昧に言葉を濁して言葉を返す。勿論、お断りするのだけれど。
「いえ、結構です……。て言うか何ですか、真夜中に笑うエリ……何たら人形って。名前からしてもフォルムからしても、なんだが見覚えがあるのですが……」
どこからどう見てもパチもんなのだが。ツッコミどころ満載だが、敢えて今はスルーしておこう。突っ込んでと言わんばかりに目を輝かせているので。
「まぁ、確かに可愛いですが……、要りませんのでおかえり願えますか?」
「そう言わないでくれ、家政婦の女子よ。お主からは同士の匂いがするのだ」
「家政婦のミ〇みたいな言い方しないで下さい……。同士、ですか?」
彼は、私の推測からするとかなりのトーク力を持っているに違いない。それが、今すぐにでも追い返せない理由の一つなのだろう。渋々話に付き合っていると、最早黄昏時になってしまった。
「あぁ、そうだとも。貴殿に唐突だがお訊きする」
ゴゴゴ____何て言う擬音が似合いそうな威圧感を纏い、真剣な眼差しで私を真っ直ぐに見据えたロン毛のその人。その双眸は、研ぎ澄まされた一振りの刀の如く美しく、吸い込まれそうで……。
「ぶっちゃけ、とんでもない【ピーー】な性癖とか──」
言い終わる前にバンッと扉を閉ざした私に、ロン毛の男性はドア越しに必死に叫んでくる。
「悪かったって!冗談だから、ねぇ、聞いてます?!」
無論、聞いてませんが。
そう言い返してやろうと思った、その時だった。聞き慣れた、第三者の声が響いた。
「何やってんの?ヅラ。俺のAちゃんになぁに話しかけてンだよ」
颯爽と駆け付けてきたのは、頼りになる警察官でも、四六時中眼帯を付け病んでいるあの人でもなく。
「あ、でほんとのところAちゃんは【ピーー】な趣味あんの?」
「ぶん殴りますよ?坂田さん」
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あるの(プロフ) - ささかさん» コメントありがとうございます、ささかさん!いつまでも待っていて下さるのですか?!ありがとうございます^^はい、できるだけ早く続編を作り直しますので、それまでは暫しお待ちください! (2018年1月6日 16時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
ささか - 作者さん、色々とお疲れ様!でも私はいつまでも待ってますから!ゆっくりでいいので続編作るの頑張って下さい! (2018年1月6日 15時) (レス) id: 94a7e06d27 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - たらぴさん» コメントありがとうございます!はい、念願の初殿堂入りを果たすことができました…!応援までありがとうございます^^たらぴさんのお言葉には励まされるばかりです! (2017年12月24日 17時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
たらぴ - 殿堂入りおめでとうございます!これからも頑張って下さい(^^)/応援してます! (2017年12月24日 17時) (レス) id: dcfd3554f9 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - 高杉るなさん» 了解致しました^^ご提案ありがとうございます!高杉さんと遊園地…とても素敵なお話ですね!できるだけ早めに執筆致しますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです! (2017年12月6日 7時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
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