No.023 ページ24
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「て言うか、避難って何から避難してたんでィ」
「聞かないで下さい。ハロウィンなんて、もう嫌いです……」
ふと思い付いた言葉を口にすると、Aは一瞬だけその瞳に切羽詰まった色を浮かべ、しかしすぐ強張った頬を緩めて。苦笑いのような、誤魔化すような表情でAはそう言って、しゅんと肩を落とした。このことは、後に神威にでも訊けばいいだろう。……と、そんなことよりも。
先程から何か言いたげに口許をむにむにとさせているAに、気を利かせて訊ねた。
「何か言いたいこと、あるのか」
「い、いえ、もう大丈夫です。て言うか本当に放して下さい」
徐々に真面目な顔で放せとコールしてくるAを目尻に、「大丈夫です」とか言われると余計気になるのだが。それでも尚微妙な顔でいるものだから、少し強く押してみる。
「言え」
「嫌です」
「でないと襲──」
「それも嫌です」
何とも八方塞がりなAの返答に、痺れを切らした俺は一つ強行手段を取ることに。ニヤリと口許に浮かんだ何かを無理矢理掻き消して、変わりに柔らかに目を細めて。
「……言ってくれやせんか?」
おねだりをするような、そんな上目遣いで頼んでみる。すると、「それは卑怯です!」と涙目で反論してきたA。あまりにも予想通りの反応に内心グッジョブと呟きながら。やがて、低く唸っていたAが。
「……トリックオアトリート、です。……お菓子くれなきゃ、イタズラします……」
「どうしても言いたかったんです」、と。その後聞いた話だが、A曰く、俺が熟睡している間にリビングルームではハロウィンパーティーと称して些細だかパーティーじみたことをしてきたらしい。その時にもAは俺の元を訪ね、起こしに来たらしいが。このまま放っておくのも可哀想だなと言うことになったらしく、お情けのような感じで……と言った経緯らしい。
「……んじゃ、お菓子はあげねェ。イタズラしてどうぞ」
開き直ったような俺の言葉に、Aはまさかの不意打ちと言わんばかりに狼狽え始める。その一つ一つの挙動すら、愛らしく愛おしく感じてしまう。
「その手口は反則です!て言うかこの状況でそう言うのはシャレにならない止めてください!」
「俺はむしろ好都合なんだかねィ」
「絶対に嫌ですから!!」
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あるの(プロフ) - ささかさん» コメントありがとうございます、ささかさん!いつまでも待っていて下さるのですか?!ありがとうございます^^はい、できるだけ早く続編を作り直しますので、それまでは暫しお待ちください! (2018年1月6日 16時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
ささか - 作者さん、色々とお疲れ様!でも私はいつまでも待ってますから!ゆっくりでいいので続編作るの頑張って下さい! (2018年1月6日 15時) (レス) id: 94a7e06d27 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - たらぴさん» コメントありがとうございます!はい、念願の初殿堂入りを果たすことができました…!応援までありがとうございます^^たらぴさんのお言葉には励まされるばかりです! (2017年12月24日 17時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
たらぴ - 殿堂入りおめでとうございます!これからも頑張って下さい(^^)/応援してます! (2017年12月24日 17時) (レス) id: dcfd3554f9 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - 高杉るなさん» 了解致しました^^ご提案ありがとうございます!高杉さんと遊園地…とても素敵なお話ですね!できるだけ早めに執筆致しますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです! (2017年12月6日 7時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
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