【銀魂】ウチのメイド。

No.001 ページ2

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「おっ、おかえりーAちゃん。遅かったね」


玄関の扉を開けるや否、鳴らしたインターホンに応じ、玄関の鍵を開けてくれた白髪のもじゃもじゃ……ではなく、此処の住人の一人である坂田銀時さんが気の抜けた声を発してほんの少し口角を上げた。

仕事帰りなのだろうか。妙に着崩されているスーツが危険な色香を漂わせ、普通の女子高校生であれば思わず赤面になってしまうのも必然的だと言えるほどの魅力誇っている坂田さん。


「坂田さん、お仕事お疲れ様でした。わざわざありがとうございます。すぐ晩御飯作りますね」


だがしかし、ここで彼に構っている暇はないのだ。急いで晩御飯を用意して、家事諸々を早急に片付けなければ。そう胸の裡で呟いて、軽く会釈して素通りしようと……したのだが。

何が坂田さんの気に障ったのか、何故か左手首を掴まれ足を止められる。ほんの少しだけ怪訝に顔を顰めれば、「怖ェ顔すんなって」と苦笑いで言った坂田さんは、何を考えたのか不意にその鋭いようで笑みを象った赤瞳を眇めて。


「やっぱAちゃん面白いわ。さっすがメイドさんは違うねぇ……」

「メイドじゃないですよ、アルバイト兼住人です」

「どっちでも一緒じゃん」


そう、何を隠そう私は、此処シェアハウスで働き、その代わりに住まわせてもらっていると言う所謂家政婦のような立場の人間なのだ。高校はバイト禁止なので、勿論黙って働いているが。だがしかし、何故か此処に住まう住人たちは口を揃えて私のことをメイドと呼ぶ。それが何故かは解せないが、ひとまず置いておいて。


「遊びたくなったら何時でもおいでよー？いっぱい゛可愛がってあげるから゛」


その言葉の意味を理解するよりも早く、掴まれていた手首にちゅっと柔らかい感触。それは紛れもない、坂田さんのもの。触れ合ったのは一瞬。なのだが、そうなのだが……。


「……興味ないので」


小さく一瞥。

……してみたものの、ぱっと解放された手首に熱が集まる。それが仇となったのか、尚もクスクス意地悪に笑った坂田さんは、「ンじゃあな」と軽薄な言葉と共に右手をひらひらと振り、リビングルームに姿を消していった。そんな後ろ姿を見届けてから、自分の頬に掌を這わせる。ひんやりとした冷たさが、熱を帯びた頬に触れると何故だか先程の言葉が脳内でリフレインされた。


「……絶対に可笑しい……」


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