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漆ノ段【事の始まりはいつも】 ページ8

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「天女様、到着しました。此処が"忍術学園"です。」



随分と立派に聳え立った門は、まるで彼を迎え撃つような雰囲気を纏っているようにも思える。

先程老け顔の青年に、手首同士を繋ぎ止めるようにして、まるで手錠をかけるように縄で縛られた為、動作をするにはかなり不自由であるが、彼は愉悦そうに、密かながらに口角を上げた。

サラストの青年が先刻、此処への道中で説明を説いた為、彼は合点が行ったのだろう。

"忍の(たまご)を育て、輩出する修習の場所"であると。

そして忍衆の彼らは"学徒"であると。

彼の憶測はパズルのピースのようにぴたりと当て嵌って居り、正しく百発百中と言える程、辻褄の合う推理を説くのだ。

相当頭の回転が速い事は重々に解るだろう。

だが然し、忍たるもの文字通り忍ばねばならないだろう事にも関わらず、此処まで輩出拠点を目立たせても構わないのだろうか、と考えて仕舞うのが現状である。



「はいはい、皆さんおかえりなさ〜い…!!入門票にサイン………………って、、エ???こ、この綺麗な方は、一体………。」



門前に佇むのは随分と挙動不審な男。

思わずその反応を見て、くすり…と、小さく微笑みを零す彼。

勿論の事で彼自身、自らの容貌が異常な程に整って居る事は、表に出さないだけで確りと自覚して居る為、"綺麗"だなんて言葉は聞き慣れて居り、寧ろ満更でも無いようだ。



「………小松田さん。この方は恐らくですが、"天女様"です。」

「…恐らくって何だよ、曖昧な言い方をするな、仙蔵、。何処からどう見ても天女だろうが……。」

「…今までにやって来た天女が、此処まで刀を使い熟せる者では無かっただろう。天女であろうとも、何かしらの修練を受けた者に違いない。」

「確かにな!!この天女様はとても強かった!!悔しい事に力足らずで、私でも適わなかったからな!!!!」

「小平太……、無駄話は止せ…。今はその時では無い。」

「無駄話とはどういう言い草だあ!!!」

「ま……、まあまぁ……、、。二人とも…、落ち着こうよ、、ね?」



ただただ騒がしい、収拾がつかないようなグダグダ感を帯びた混沌とも言えようこの空間。

そんな場の空気を切り裂いたのは、小松田と呼ばれた男の一言だった。













(新たな出逢い。)

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作者名:ゆづ。 | 作成日時:2024年1月18日 23時

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