弐ノ段【夢覚めの靄は晴れぬまま】 ページ3
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目を覚まして見ては
其処は
うつらうつらながらに、蒼く煌めく宝石のような眼を頻りに瞬きさせつつ、少し上半身を起こす様な体勢を取っては、あたりは見渡す。
腰元のベルトには普段通り、愛刀である野太刀型の日輪刀が差されて居り、
その他自身が所持していた逸品。ダンスリボンのように畝った形状で、伸縮機能の付いた日輪刀。そして打刀二刀。加えて入隊当初時点で扱っていた偃月刀の形状をした日輪刀などの、様々な形状をした日輪刀達が眠って居る。
それらが入った大きなサイズの刀袋が、自身の横隣に放られるようにして置かれて居たのだ。
加えて自身の身体。まるで時間が戻ったような、不思議な感覚を覚える程には、違和感を感じていた。
失明した筈の左眼は、はっきりと物を目視する事が出来て居る。
失くした筈の右肘から下に掛けての感覚が有る。それもしっかりと脈が動き、きちんと動作させる事が出来る。
血に塗れて腥い香りを漂わせて居た筈の身体や髪は、普段通りの花のような淡い香りを纏って居た。
毒の分解が追い付かなかった為に、歩けぬ程重かった筈の身体は、普段と同じ軽さを帯びた感覚で。
そもそもの話、彼は"あの時"、"あの瞬間"に命を落とした筈だ。
……何故、自身はこうして息をする事が出来て居るのだろうか。
ただ今は、それだけが不思議で不思議で、遣ること成すことに置いた全ての術を失った彼は、正しく如何しようも無い、と言えよう状況に陥った。
(その目覚め、正しく懜憒につき。)
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作者名:ゆづ。 | 作成日時:2024年1月18日 23時