逃走 ２ ページ24
後ろから、およそ人間とは思えない速さの足音が迫ってくる。
狭い道を利用して、あるいは室外機等の障害物を駆使して、辛うじて逃げられている状態だ。
コ「ゾムかっ、トントンに、連絡せぇへん！？もうそろそろっ、体力の限界やっ！」
シャ「黙って走れコネシマぁ！」
後ろの２人の会話を聞きながら、走る。走る。走る。走る。
構造が変わり、よく分からない入り組んだ路地裏を、ただひたすら。
背中を伝う汗の気持ち悪さも、息を吸う度に剥がれ落ちそうな喉の痛みも、気にならないくらいに。
こうなってしまった原因は、つい十数分前に遡る。
──────────
──────
───
シャ「迷子なん？案内したるわ」
そう言うが否か、肩に置かれた重い掌。
小刻みにそれが震えているのは、私への怒りか、呆れか、はたまた私の勘違いか。
女性を横目に見ると、これでもかと目を見開いて私とシャオロンを凝視している。
.....これは非常に不味い。
『.....いえ大丈夫です！すぐそこでお母さんが待ってるので！』
コ「.....なら強制連行や」
『え』
女「な、何故です！？この子は何かしでかしたのでしょうか！？」
コ「おっ！初対面の子供を守ろうとするのは良い心掛けやな！
けどなぁ.......実はこいつ、ある貴族の隠し子やねん。今まで村に追いやられとってんけど、今日からこの町に住ませる事にしたんや」
女「え.....？そう、なんですか？」
コ「そうやねん。
でも、観光客って設定でこの町に着いた途端どっか行ってもうてなぁ。
公にはしとらん案件やったから、見つけるたんびにああいう芝居せんといかんし.......」
女「あ、そうなんですか！芝居だったんですね！お疲れ様です！
お嬢ちゃん、ちゃんと幹部様の言う事聞かなきゃ駄目よ？あなたを助けてくれてるんだから」
恐るべきコネシマの隠れた能力。即興で創り上げた虚妄を真実だと思い込ませる、自然な演技だ。
まんまと騙された女性は、まるで幼子を見守る母親のような目で私を諭してきた。
女性の瞳からは、もう疑いの色が見受けられない。やはり幹部の影響力は凄まじいな。
コネシマが話した設定なら、今私が逃げても不自然ではない。
そうと分かれば、とる行動は１つ。
『私、もっとこの町を見ていたいのっ！』
コ「ﾌﾞｯ」
シャ「しまったｯ！」
都会に疎い貴族の娘らしい口調でそう叫び、吹き出したコネシマを尻目に路地裏へ駆け出して、今に至る。
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とうみん(プロフ) - あなたの作品は情景描写がとても綺麗で、つい作品の世界観にのめり込んでしまいました。有名な小説家にも文才などありません。何度も何度も書き直してやっと傑作が生まれるのです。偉そうなことを言ってすみません。とてもおもしろかったです。ありがとうございました。 (9月3日 18時) (
レス) @page36 id: a126db2d2e (このIDを非表示/違反報告)
るる - 読んでいてとても面白かったですよありがとうございます (2022年12月25日 16時) (レス) @page36 id: a2a90b5064 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - またいつか、続きを書く気持ちが湧いたならどれだけ時が経っていようとも、遠慮せず作品をまた更新してください。どうか、貴方様の作品を心の底から待っている人がいることを忘れないでください。本当にありがとうございました。コメント2つもしてすいません！ (2022年8月17日 12時) (レス) id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 打ち切りの言葉にはショックを受けましたが、読んでいるだけの私には分からない作者様だけの事情もあると理解しました。面白く、読みがいのある作品をどうもありがとうございました。 (2022年8月17日 12時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
Ajisaaaai(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました (2020年12月3日 8時) (レス) id: 4585525dae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クレア | 作成日時：2019年10月26日 16時
