30. 一緒に ページ30
ま、待って、今、私、何て…
「…え…」
目の前にはぽかんと口を開けた常田さん。
「…つ、つまり、そういうこと…です」
今にも火が出そうな顔を両手で覆い隠しながら、そう言った。
こんなはずじゃなかったのに。
穴があったら飛び込みたい！
何だか泣き出してしまいそうで、そのままずっと顔を覆いながらひたすら黙っていると、常田さんの声が沈黙を破った。
「…じゃあ、もっと困らせてもいい？」
「…え」
顔を上げる。
目の前が真っ暗になった。
あの日鼻をかすめたタバコの匂いがふわりと漂った。
常田さんの胸の中にいた。
あの時は、肩に寄りかかられただけだったけど、今は強い力で、しっかりと両腕で抱きしめられている。
「……ははははっ」
見上げれば、屈託のない笑顔で常田さんは笑っていた。
蕩けそうな私を見て、また笑って、肩に顔を埋められる。
「なんだよ…。不安になってたのがバカみてぇだ。嬉しいよ、すごく」
「………っ」
「なぁ、A」
一度体を離すと、胸がいっぱいで口のきけない私を見つめながら、常田さんは言った。
「Aが居ないと、毎日物足りなかったんだ。悩んでばかりの自分が嫌になった。でも、Aを好きな自分は好きなんだ。
これからも君の歌、聴かせて欲しい。俺の作る曲も全部 君に聴かせたい。一緒に高めあっていきたいし…傍に居て欲しい。いいだろ？」
「……もちろんです。そんなの……嬉しすぎます」
嬉し涙を指で拭いながら答えた。
私の背中を押してくれた人は、他でもなく常田さんだ。
ぶっきらぼうに見えて、ほんとはとても優しいところ。
一見 怖そうだけど、ほんとはとても笑顔がかわいいところ。
たまにお茶目なところも見せてくれたりして、誰よりも熱い心を持っていて。
そんなところが大好きだ。
これからもっとたくさん、好きなところが増えていくかもしれない。
でも、もう隠さなくてもいいんだね。
「…そろそろ行かねぇと。いつまでもアイツらを待たせておくわけにはいかねぇし…」
「そうでした。えっと…じゃあ、私はこれで…」
「…Aも一緒に来る？」
「え！い、いいんですか？」
「いいよ。アイツらに彼女だって紹介するから」
「そ、それはちょっと…！」
「ははは、冗談だよ」
「もう…！」
いたずら顔の常田さんと笑い合いながら、私は歩き出した。
「…あの。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
大好きな人の隣を歩ける幸せを噛み締めながら。
おしまい
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惑星ワタシ(プロフ) - こちらこそです！ずっと読んで下さっていたなんて嬉しいです、頑張って更新し続けて良かったです泣 ありがとうございました！ (2020年7月10日 21時) (
レス) id: a8b54cfafa (このIDを非表示/違反報告)
あみ - はじめまして、ずっと読ませてもらってました。ホントに素敵なお話。ありがとうございました。 (2020年7月10日 19時) (レス) id: 7d59dcc18e (このIDを非表示/違反報告)
惑星ワタシ(プロフ) - かのんさん» ありがとうございます！楽しみにして頂けて嬉しいです！気合いが入ります(^^)もうしばしのお付き合いよろしくお願いいたします！ (2020年6月30日 9時) (レス) id: a8b54cfafa (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 毎回続きが気になる展開のお話です！これからも更新楽しみにしてます！ (2020年6月28日 13時) (レス) id: a040a3f75f (このIDを非表示/違反報告)
惑星ワタシ(プロフ) - あすぴーさん» わー、ありがとうございます！とっても嬉しいです！King Gnu以外のアーティストはですね、敢えて名前は出さないようにして、読者さんに好きに当てはめてもらうみたいな感じでやっております。更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: a8b54cfafa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：惑星ワタシ | 作成日時：2020年3月6日 17時
