こんな結末認めない。【第二夜】 (ページ29)

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負けない【アリス】ページ29

「……というかさ」

何もする必要なくないかしら？

机に肘をついて、アリスが退屈そうに放った言葉に、会議室の椅子に座った悠久古書店の面々はうーんと唸った。

今は会議中である。
ロアさんの一早い情報のお陰で、おそらくタチアオイ出版と同じくらいの速さで会議を始められた古書店だが、ーー例によって、今回もこれといった案は出なかった。

「だってロアさんの情報では、改変に必要なのは帝さんの能力で出したものなんでしょう？なら出版社は必ずこっちに向かってくるじゃない。それを迎撃して、その隙に原本を奪えばいいんじゃないのかしら」

まあ、そんな考えも読まれてるんだろうけど。

アリスは小さくあくびをして、となりに座る帝さんをチラリと見やる。……本当なら、他の人の原本にはあまり興味がなかったのだけれど。

－－帝さんはかぐや姫の幸せのために、原本の維持を望んだ。

それなのに、かぐや姫は原本の結末を認めずに、自分の幸せのために原本の改変を望んでいる。

ああ、なんて愚かしい物語！

竹取物語って、結局何エンドなのかしら？それはきっと、読者によって答えは異なる。かぐや姫にとってはバットエンドだったのかもしれない。

じゃあ、翁や嫗にとっては？

わからない。わたしは彼らじゃないから。バットエンドかもしれないし、かぐや姫の帰還を受け止めた彼らにとっては、かぐや姫が月で幸せになる事こそがハッピーエンドだったのかも。

ーーそうしたら、幸せを掴むために改変しようとするかぐや姫は、どうなるのかしら？

「それでは、こちらからは特に攻撃は仕掛けずに敵の攻撃を待つということで。敵が来たら、アリスとハンスが幻覚で翻弄。幻覚が効かなかったり、突破して来た者はそれ以外の人が迎え撃って、その隙に原本を奪う。

それと、何が利用されるかわからないので、今回は帝さんは絶対に能力を使わないという事で……大丈夫ですか？」

前回以来すっかり作戦参謀のようになったシンデレラちゃんが、簡単に作戦概要を纏める。

みんなが頷いて、立ち上がった。
今日は満月。詩さんの能力も発動できる。
－－今回は、勝つわ。年相応に子供らしく負けず嫌いなアリスが、目に楽しみと闘志を浮かべて古書店の外へと踏み出した。