ガラスと魔法【シンデレラ】 ページ2
「……ふふふ」
誰もいない、霧だけの空間を見つめて、
――シンデレラは笑った。
「ふふ、あはははッ」
天を振り仰いで、笑う。笑い声しか出てこなかった。
笑って、笑って、片手で顔を覆う。
「ーーふざけないでよ」
今までにないような、どす黒い感情が渦巻いていた。
幸せなのに、幸せになったのに、いつもつきまとう虚無感は。
お義母さま達は二度と手に入れられない物を失った。知っている。そして読者は、それを「悪者に下される罰」として、当然のこととして受け取る。知っている。
だから、だから嫌だった。大切な家族に変わりない人々の犠牲の上に成り立つ幸せなんて、そんなもの、
「要らないなんて、言えないじゃないの。私を幸せにしてくれた人はどうなるの。魔法をかけてくれた妖精のおばあさまは、私を見つけてくれた王子はどうなるの。裏切ることなんて、そんなこと、私には−−。
ふざけないで、馬鹿にしないでよ。私が幸せになることでお義母さまたちが救われるなんて、そんな馬鹿なこと思うわけないじゃない。今まで何度、物語を改変したいと思ったことか。
でも、それが作者の意図なのだから。読者にとってのハッピーエンドなのだから、受け入れるしかないじゃない……っ!」
パリン。ガラスの割れる音がした。
それは頭の中で響いて、何度も何度も木霊する。
お母さまが死なない世界。お父さまが死なない世界。
それじゃ駄目だ。駄目だったんだ。お義母さまやお義姉さまが不幸になる世界が、私にとっての幸せなんだ。
「……受け入れなさい、なんて無責任なこと言えない。でも、世界はそんなに優しくない。私達は−−所詮、登場人物にしかすぎない」
刹那、シンデレラから溢れ出る膨大な殺気。周囲の霧が全てガラスに変わって、一つの大きなガラス球になっていく。
彼女は絶叫した。
同時にガラス球が鋭く輝き、猛スピードで宙を舞う。そして、数百メートル先のロートに到達し――正確に、彼女をガラス球に閉じ込めた。
そしてガラス球を何百メートルも高く浮かせる。そのまま地面に振り落としてやろうと手を掲げ、――その場にへたり込んだ。
能力を使いすぎたのだ。遠のく意識を必死で繋ぎ止めて、なんとかガラス球を浮かせ続ける。
「見せてよ。登場人物も、作者も読者も満足する、誰も傷つかないハッピーエンドがあるなら、見せてよ――」
『シンデレラ』は、ハッピーエンド。
でも、私はそんなこと思えない。
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あぷり(元はる櫻)(プロフ) - 続編で更新します (2017年12月16日 17時) (レス) id: 1e40ca4b4e (このIDを非表示/違反報告)
総悟13@サブ垢(プロフ) - 終わりました (2017年12月16日 14時) (レス) id: 296183b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13@サブ垢(プロフ) - 更新します (2017年12月16日 14時) (レス) id: 296183b3c6 (このIDを非表示/違反報告)
ツバサ(プロフ) - 総悟13@サブ垢さん» 遅くなってすみません、終わりました。 (2017年12月16日 13時) (レス) id: 0d08c1bb88 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - http://uranai.nosv.org/u.php/novel/e071ba2eb19/ 続編です。皆様の予約が終わり次第関連付けしますが、もし足りなくなった場合にはこちらに。 (2017年12月15日 19時) (レス) id: d43f25135a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梨紗 x他15人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年12月3日 18時